【更新日:2021年9月17日 by 森あゆみ】
SDGsへの注目が高まるとともに、多くの企業がSDGsへの取り組みを社外に発信するように成りました。一方でSDGsに取り組みつつも、実態が伴っていないケースも多く、「SDGsウォッシュ」と揶揄されることが増えています。
SDGsには全部で17の目標と169のターゲットが設けられ、それぞれが重要です。社外にアピールするためだけではなく、幅広く社内外の課題を解決する心構えが必要と言えます。
この記事では、SDGsウォッシュの意味や回避方法を事例とともにわかりやすく解説していきます。
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SDGsとは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
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SDGsウォッシュとは
SDGsウォッシュの意味
SDGsウォッシュとは、「SDGs」と「ホワイトウォッシュ(ごまかす、うわべを取り繕う)」を組み合わせた造語で、SDGsへの取り組みを行っているように見えて、その実態が伴っていないビジネスを揶揄する言葉です。
また、二酸化炭素削減を掲げているのにもかかわらず、火力発電関係の企業に投資しているなど、言動が一致していないこともSDGsウォッシュの1つと言えます。
近年、SDGsの盛り上がりもあり、多くの企業がSDGsレポートやCSRレポートなどの報告書をリリースしています。表面ではSDGsに積極的に振る舞いつつも、SDGsに反した取り組みが社内で横行していないのか、ガバナンスを整え、多面的にチェックする必要があります。
Ethical Corporationというイギリスの企業が世界中の1400を超える企業に行った調査によると、3分の2以上の企業がSDGsを取り入れた活動を行っていると回答している一方で、明確な目標を設定し、的確な行動に移せている企業はおよそ12%しかいませんでした。これはSDGsが本当の意味で企業に浸透しているとは言えない状況を示しています。
SDGsウォッシュとグリーンウォッシュの違い
SDGsウォッシュはもともとグリーンウォッシュという言葉をもとに作られました。
グリーンウォッシュとは、1980年代半ばから使われ始めた言葉であり、「環境にやさしい」「地球に優しい」「グリーン」などのイメージをアピールしている一方で実態が伴わず、消費者に誤解を与えるような状態を指します。
SDGsは環境問題以外にも多様なテーマを取り入れており、SDGsウォッシュの中でも環境問題に基づくものは、グリーンウォッシュとも言えるでしょう。
SDGsウォッシュと指摘された企業例
ファーストリテーリング
ユニクロを運営するファーストリテーリングは、2014年に下請け企業の過酷な労働環境がSDGsウォッシュに当たるのではないかと指摘されました。
ファーストリテーリングは2014年のCSRレポートで、「提携企業とのパートナーシップの強化」や「貧困問題・雇用の拡大に務める」など労働者を支援することを掲げていました。
しかし香港を拠点とするNGOのStudents & Scholars Against Corporate Misbehaviourが同年に実施したファーストリテーリングの下請け企業への調査で、その過酷な労働環境の実態が明かされました。
このような報告書と実態のズレはSDGsウォッシュの1つであると考えられます。
Nestle
Nestleはキットカットなどの製品で有名な世界的食品メーカーです。
Nestleは2010年に森林破壊に寄与するパーム油業者との取引をやめると宣言したものの、2018年になってもそれらの生産者をサプライチェーンのうちに抱えたままでした。
パーム油は世界中で最も使用されている油の一つで、その生産のために東南アジアを中心に多くの森林が伐採されています。
そしてその環境破壊を引き起こしている背景から、パーム油の使用はサステナビリティを考える上で減少させなければならないとされています。
みずほ銀行
みずほ銀行は2019年に、環境方針として主要グループ会社全体のCO2削減を策定しています。しかし、環境方針で見せる態度とは異なり、同年に石炭産業に投資し、その融資額は世界トップになりました。
石炭による火力発電は、二酸化炭素を排出する主な原因の一つであり、多くの企業が電気使用量を減らしたり、再生可能エネルギーへと移行したりすることで二酸化炭素削減を目指しています。
みずほ銀行も、国内事業所における電気使用由来の二酸化炭素を削減することを目標に掲げていました。しかし、環境方針と異なり、二酸化炭素を多く排出する石炭産業へ巨額の融資を行っていたのです。
一連のみずほ銀行の姿勢は、顧客の目につきやすい自国ではSDGsに貢献している姿勢を見せながら、遠方の国の石炭産業に投資をしているということで、強い非難を浴びました。
これを受けてみずほ銀行は、2020年に環境に配慮した投融資の取り組み方針の抜本的な変革に踏み切り、環境方針と事業をすり合わせるための取り組みをはじめています。
SDGsウォッシュを避けるためには
アウトサイド・イン・アプローチ
SDGsウォッシュを避けるためには、SDGsへの理解を深めるほか、事業へのアプローチも熟慮する必要があります。
アウトサイド・イン(Outside-In)とは、2015年9月に国連サミット採択されたSDGs(持続可能な開発目標)のビジネス指南書「SDGコンパス」にも記載されている公式のアプローチです。アウトとは「社会」を、インは「企業や組織」を意味します。つまりアウトサイド・インとは、社会から企業に向かうアプローチということで、「社会課題の解決を起点にしたビジネス創出」を意味しています。
これからのビジネスは、収益をあげることだけを目的にするのではなく社会課題を解決しつつ収益を得られるモデルに、考え方を変えていく必要があります。
このようなSDGs思考を事業に織り込んでいくことがSDGsウォッシュを回避するためには重要です。
パートナーシップ
パートナーシップとは、自社だけでSDGsのことを考えるのではなく、関連する企業や団体(パートナー)との連携を深めて、包括的なアプローチをしていこうという考え方です。
SDGsはさまざまな分野を掛け合わせた包括的なアプローチで持続可能な社会を目指しているため、特定分野に偏った考え方でSDGsに取り組むと本来の目的からずれてしまうことも考えられます。
そのためステークホルダーとのパートナーシップをしっかりと構築していくことが大切です。
SDGsウォッシュ回避のためのガイドラインを参照
電通は企業に向けたSDGsに関するガイドラインとして、『SDGsコミュニケーションガイド』を作成しています。
ここでは企業経営と広告コミュニケーションを軸に、企業がいかにSDGsと関わっていくべきかが紹介されている。SDGsがもたらす企業経営へのメリットや、SDGsに取り組む際の留意点などが書かれているため、ビジネスに関わる人はぜひ読んでみることをおすすめします。
参考:https://www.dentsu.co.jp/csr/team_sdgs/pdf/sdgs_communication_guide.pdf
まとめ
いかがだったでしょうか。SDGsに関したビジネスは社会に貢献できる取り組みであり、トレンドとしても大きくなってきているため、企業にとっては非常に魅力的なテーマでしょう。しかしそこには注意すべきことも多く存在するため、SDGsの最終的は何なのかをしっかりと理解した上で取り組んでいくことが大切です。