《完全版》 日本のSDGsの現状|政府の取り組みから企業事例まで

#SDGs目標13#SDGs目標14#SDGs目標15#SDGs目標16#SDGs目標17#SDGs目標4#SDGs目標5#SDGs目標9#ジェンダー#平和#教育#気候変動#産業#福祉 2021.03.29

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【更新日:2021年9月17日 by 森あゆみ

日本は世界でも有数の経済規模を持ち、GDPはアメリカ、中国に次ぐ世界3位です。そんな日本は国連加盟国が負担することが義務づけられている分担金の8.564%を占める約2.5億ドルが2021年に割り当てられています。

日本が世界で果たす役割は大きく、近年注目が高まるSDGsへの取り組みもより活発化させていく必要があります。

一方で日本はSDGsの達成度が世界的に見ると遅れている傾向があります。

今回の記事では日本にフォーカスし、SDGsの現状や課題、政府の取り組みについて解説していきます。

SDGsとは

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。

2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。

SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。

SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。

▼各目標の詳細は以下の画像をクリック

▼SDGsについて詳しくはこちら

日本のSDGsの現状|SDGsの取り組みは17位

世界と比べた日本のSDGsの取り組み水準

日本のSDGsの取り組みの水準は世界の国々と比較して、どの様になっているのでしょうか。まずは日本のSDGsの取り組みの現状を解説します。

2020年6月30日に持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(Sustainable Development Solutions Network)とドイツ、べルテルスマン財団の報告書である「持続可能な開発レポート(Sustainable Development Report )」によると、日本のSDGs達成度ランキングは166カ国中17位です。北欧諸国がトップ3を占め、1位はスウェーデン、2位はデンマーク、そして3位はフィンランドという結果となりました。

日本で達成度の高いSDGsの目標

日本のSDGs達成度の順位を押し上げている理由は、以下の3つの目標において達成度が高いからです。

  • 目標4:質の高い教育をみんなに
  • 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 目標16:平和と公正をすべての人に

日本は世界の中でも高い教育環境を整備していることが特徴的です。ユニセフによると2017年時点で文字の読み書きができない人は世界で約7億5000万人(世界の15歳以上の6人に1人)いることがわかっています。日本はすべての人が義務教育を受けることができるため、ほぼ100%の識字率となっています。

また、国内に大学や専門学校が揃っていることも特徴で、母国語だけで大学過程まで受けることができる国は世界では多くありません。

目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」では、世界3位を誇るGDPを有していることが反映され達成度が高くなっています。特に製造業や自動車産業が発展しており、従来から日本経済を牽引してきました。

一方で、インターネットをはじめ最新技術の分野ではアメリカや中国でさまざまなサービスや新たな技術開発が積極的に行われ、日本との差が開いているのが現状で、課題も残っています。

第二次世界大戦時に被爆を経験した日本は、戦後「平和」を柱に発展を続けてきました。日本国憲法9条では戦争を放棄しており、戦後、一度も戦争を経験していません。また、すべての国民が裁判を受ける権利が保障されており、司法へのアクセスが開かれていることも特徴です。

これにより目標16「平和と公正をすべての人に」の達成率が高くなっていると言えます。一方で、世界を見ると紛争や戦争は絶えない状態が続いており、世界に平和を広げていく役目があるといえます。

日本で達成度が低い目標

一見すると166カ国中で17位というランキングは高いように見えますが、2019年の同報告内での日本のランキングは15位で前年比で2位ランクを落としてしまっています。

日本が順位を落とした理由は以下の目標の達成率の低さが挙げられます。

  • ゴール5:ジェンダー平等を実現しよう
  • ゴール13:気候変動に具体的な対策を
  • ゴール14:海の豊かさを守ろう
  • ゴール15:陸のう豊かさも守ろう
  • ゴール17:パートナーシップで目標を達成しよう

これらの問題の達成率を上げるためには、女性の活躍推進や、海洋プラスチック、畜産業や大気保全など私たちの身の回りのさまざまな問題への対策をしていかなくてはなりません。

SDGsに取り組む日本企業の割合

帝国データバンクが実施したSDGsに関する企業の意識調査によると、国内で自社におけるSDGsへの理解や取り組みの重要性を理解し取り組んでいる企業は8.0%、意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている企業は16.4%であり、SDGに積極的である企業が24.4%でした。

また、意味もしくは重要性は理解できるが、取り組んでいないが32.9%、意味または、重要性を理解できない14.8%で半数近くが SDGs を知りつつも取り組んでいないという結果となりました。

SDGgの認知度の向上に伴い、国内の企業でもSDGsへの取り組みに注目が集まっています。た。しかし、割合だけを見ると、SDGsの自体の認知度は高い一方で、内容や取り組み方、重要性の理解があまり拡大していないということがわかります。

日本政府のSDGsへの主要な取り組み

SDGs推進本部を設立

日本政府は、2016年5月に全閣僚を構成員として「SDGs推進本部」を設置し、安倍晋三総理大臣(当時)を本部長とし、SDGsの問題に積極的に取り組む体制を構築し、同年12月に「SDGs実施指針」が発表されました。

「SDGs実施指針」の中で、5つのP(People, Prosperity, Planet, Peace, Partnership)に対応して8つの優先課題が掲げられ、2030年にSDGsを達成するに欠かせないものとされています。

【8つの優先課題】

  1. あらゆる人々の活躍の推進
  2. 健康・長寿の達成
  3. 成長市場の早出
  4. 持続可能で強靭な国土と質の高いインフラの整備
  5. 省・再生可能エネルギー、気候変動対策、循環型社会
  6. 生物多様性、森林、海洋等の環境の保全
  7. 平和と安全・安心社会の実現
  8. SDGs実施推進の体制と手段

また、2020年12月、第9回推進本部会合では「SDGsアクションプラン2021」が決定されました。これは、上述の8つの課題の解決を推進するための具体的施策であり、毎年12月に翌年度のプランが発表されます。

ジャパンSDGsアワード

SDGs達成のために優れた取り組みを行っている企業や団体を表彰するというジャパンSDGsアワードという表彰制度も政府によって設けられています。

SDGsに積極的な企業を表彰することで、企業の意欲を高め、SDGsへの取り組みを促す目的があります。

令和2年12月に行われた第4回ジャパンSDGsアワードではSDGs推進本部長表彰に「みんな電力株式会社」、SDGs推進副本部長賞に「北海道上士幌町」と「青森県立名久井農業高等学校 環境研究班」が表彰されています。

Society 5.0

狩猟社会をSociety 1.0、農耕社会を Society2.0、工業社会をSociety 3.0、情報社会Society 4.0とし、それに続く、第5期科学技術基本計画において日本が目指すべき未来社会の姿としてSociety 5.0が提唱されました。

これは、AIなどの最新技術などを利用することで、社会の情報共有を容易にし、また、ロボットなどの活用で少子高齢化、貧富の格差などの社会問題、経済問題の解決を図るものです。

Society 5.0に向けての取り組むことで、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合える社会、一人ひとりが快適で活躍できる社会を目指します。

【テーマ別】日本政府の取り組み

気候変動の取り組み(SDGs 目標13,14,15)

気候変動の取り組みに関して政府の取り組みとして重要なキーワードが「温室効果ガス排出量ゼロ(カーボンニュートラル)」「再生可能エネルギー」です。

産業革命以降、上昇を続ける地球の温度のさらなる上昇を防ぎ、地球温暖化や気候変動による地球や私たちの生活へのダメージを抑えるために、温室効果ガス排出量の削減と再生可能エネルギーの推進は喫緊の課題となっています。

これを受けて菅義偉首相は10月26日、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすると所信表明演説で発表しました。これ以前は、2013年比で80%削減する、という消極的な態度を取ってきたため、従来の政府の意向を覆す菅首相の演説は世界から関心が寄せられました。

温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするということは脱炭素社会を目指すということと同義であり、再生可能エネルギーや原子力の使用の割合をあげていこうと表明されています。

特にCO2を排出しないエネルギーとして水素の活用も目標の2050年に向けて技術の革新が期待されます。

▼脱炭素社会について詳しくはこちら▼

▼再生可能エネルギーについて詳しくはこちら▼

ジェンダーの取り組み(目標5)

女性蔑視などのジェンダーバイアスが未だに蔓延する日本社会において、ジェンダーの問題早急に解決すべきです。

世界経済フォーラムによって調査されたジェンダーギャップ指数(2020)によると、日本は153カ国中、121位という結果でした。つまり、日本は世界でもジェンダーギャップが著しい国なのです。

日本の状況を打破するために、日本ではさまざまな取り組みが行われています。

例えば、2016年5月20日に「女性の活躍推進のための開発戦略」が発表されました。これは、女性の活躍と成長を目的とし、女性に優しいインフラ整備や女子教育の支援、防災分野などといった女性への指導役割への参画推進が挙げられています。

基本原則として女性と女児の権利の尊重、能力発揮の基盤整備、そして政治などへの女性参画とリーダーシップの向上を掲げています。

▼詳しくはこちら▼

福祉

少子高齢化が進んでいる日本において、介護などの福祉の設備や人材に、また栄養面に対する改善が求められています。

「東京栄養サミット2021」というものが2021年12月にオリンピック・パラリンピック開催に合わせて東京で開催されます。

これは、2030年までに栄養価が高く、安全で手に取りやすい価格で食べ物を入手することの出来る世界を作るために1.栄養のユニバーサル・ヘルス・ガバレッジへの統合、2.健康的で持続可能フードシステムの構築、3.脆弱な状況下における栄養不良対策、4.データに基づくモニタリング(説明責任)、そして5.栄養改善のための財源確保の5つのテーマを取りあげ、課題解決に向けた議論と取り組みを発表する場です。

また、福祉では介護が連想されやすいですが、その他にもさまざまな分野を含みます。福祉とは幸せや豊かさを意味し、最低限の幸福と社会的援助をすべての市民に提供するという理念です。

2020年4月に改正健増法が施行されたことにより、屋内での煙草の喫煙が原則禁止になったことも日本政府の福祉の取り組みと言えます。この取り組みにより、有害物質を含む煙草を吸いたくない人、また吸わない人にとって快適な場所の提供が可能になっています。

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教育(SDGs 目標4)

義務教育は、日本人にとっては当たり前の権利ですが教育を受けることのできない人々が世界中に多くいます。

日本国憲法ではすべての親に対し、子供に9年間の普通教育を受けさせる義務を明記しています。

日本ではさらに教育の機会を保障するべく「高等学校等就学支援金制度」が発足し、対象者の国公立高等学校の授業料が実質無料、もしくは減額され、また2020年には私立高等学校に通う生徒にも支援が行き届き、対象者は実質無料で学校に通うことができるようになりました。

また、文部科学省では、賛同した企業・団体・大学等が、未来を担う子供たちのために、出前授業などの教育プログラムを提供する「土曜学習応援団」を推進しています。多くの子供たちに、出前授業・施設見学・資料提供などの教育プログラムを提供するもので、800社以上の企業が登録しています。

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産業と技術革新(SDGs 目標9)

2020年代に入り技術革新のスピードがさらに速くなっています。SDGsにおいても目標9で、「産業と技術革新の基盤をつくろう」が掲げられ、産業と技術革新が重要なテーマになっています。

文部科学省では、環境問題の解決や産業競争力の強化のためにさまざまな環境エネルギー分野の研究を推進しています。例えば、LEDの研究では、LEDを利用することで省エネが期待でき、従来の半導体材料のエネルギー損失量が5wだとした時に、それを0.5wまで抑えることができます。

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平和と公正(SDGs 目標16)

日本は日本国憲法第9条において戦争放棄をしているため平和な国であると認識をしている人が多いかもしれません。しかし、平和の定義は戦争をしていない、ということだけではありません。

国連グローバル・コンパクトという企業などが持続可能な成長を実現するために参加するイニシアティブであり、そこには10個の原則が存在します。

その10個目に「企業は、強要や贈収賄を含むあらゆる形態の腐敗の防止に取り組むべきである」というものがあります。官僚や政治家の横領や職権濫用、企業の贈収賄などといった「腐敗」と呼ばれるものは、人権や平和などの様々な問題に結びつき安く、これが起こってはSDGsの目標は達成されません。

日本では、政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)事業の不正や腐敗の防止を目的として不正を行った企業を一定期間ODA事業に参加させないなどといったペナルティ付けをしています。

また、2016年に行われた「難民及び移民に関するサミット」において、当時の総理大臣であえった安倍晋三氏が難民への人道支援の他に、難民の受け入れコミュニティへの開発支援を実施することにより、難民・移民問題の解決への役割を果たすことを宣言し、2016年当時から2018年の3年間において、28億ドルの支援をすることを発表しています。

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日本企業のSDGs事例

ここからは企業のSDGsの事例を見ていきたいと思います。

企業① クボタ

産業機械などのメーカーで知られるクボタは排気ガス規制に配慮したミニバックホーを初めとする製品の開発や、産業用小型汎用エンジン、空調機器などからの環境配慮を行っています。エンジンについては、アメリカのカリフォルニア州「CARB ULG排気ガス規制」の認証を世界で初めて取得。また、欧州ノンロードディーゼル第5次排出ガス規制という厳しい審査も通過し環境への多大な配慮の態度を見せています。
参照:https://www.kubota.co.jp/sustainability/index.html (クボタ|サステナビリティ)

企業② JAL

JALにおいては、労働時間の適正化やテレワークシステムの導入、好きな席を選ぶことのできるフリーアドレス導入などが行われています。

また、両立支援制度という、育児や介護と仕事の両立の支援を行う制度があり、その制度を男女の性別問わず利用することができるようになっています。これは、少子化の進行を踏まえ、子どもが健やかに育成されるような設備を整えることを掲げた「次世代育成支援対策推進法」に2008年6月に認定されています。

参照:https://www.jal.com/ja/sustainability/human/work_style/ (ジャパンエアライン|サステナビリティ)

企業③ ミズノ

「より良いスポーツ品とスポーツの振興を通じて社会に貢献する」という経営理念を持つミズノではダイアモンドスポーツ事業という地域コミュニティーの形成や生涯スポーツへの貢献やグラブなどの野球品を修理するワークショップなどの取り組みや、コンペティションスポーツ事業といったスポーツの力を信じて、前へ進むアスリートたちの目標宣言を発信することなどでSDGsへの取り組みを行っています。

参照:https://corp.mizuno.com/jp/about/sdgs.aspx (ミズノ|SDGsの取り組み)

さいごに

近年、よく耳にするようになったSDGsですが、日本の視点で現状を振り返りました。

SDGsは政府や自治体のみが行うことではなく、私たち一人ひとりが身近なところでも取り組めます。

私たちが住む地球の誰一人も取り残すことがないように、自分の行動を見つめ直す機会となれば嬉しいです。

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