【更新日:2021年9月15日 by 三浦莉奈】
富士通株式会社(以下、富士通)は、通信機器メーカーとしてスタートさせ、ICTサービス(情報通信技術)市場で国内No.1、世界でも売上高No.7を誇る実績があります(2019年)。
富士通は、パソコンや電子機器を販売する情報機器メーカーとしてだけでなく、通信技術を利用した効率的なコミュニケーションを促進するICTのリーディングカンパニーとして、高い品質の製品とサービス提供を続けています。また、製品の品質向上だけではなく、ICTを活用した新たな働き方も先進的に導入してきました。コロナウイルスの感染拡大により、2020年に始めてテレワークを導入する企業も多い中で、2017年4月には全社員を対象にテレワーク勤務制度を導入しています。
このように、富士通は利潤の拡大を目指すだけでなく、社員の働き方改革や、より良い社会を作ろうとする企業理念と取り組みの実績が、社会世界でも国内でも高く評価されています。特に社会・環境分野の取り組みに対しては、米FORTUNE誌「世界で最も賞賛される企業」に選出されたり、2020年12月に発表された第4回「ジャパンSDGsアワード」では、5Gを活用した遠隔校外学習が評価され、SDGsパートナーシップ賞を受賞したりと、数々の賞を受賞しています。
このページでは、富士通の事業内容からSDGsの戦略や活動を幅広く紹介します。SDGsのモデルケースとして参考にしていただければ幸いです。
見出し
富士通のビジョン / 事業
富士通の概要
富士通は、数多くのイノベーションを実現し、ICTを通じて社会をより良く変えてきました。さかのぼること1923年、関東大震災により大きな被害を受け、電信・電話設備も打撃を受けました。当時は、電話は自動的に繋がらず、手動で電話線をつなぐのが一般的な接続方法だったので、利用者が増え、通信量が増えるほど電話線をつなぐ人のの負担が増えてしまうという問題が発生していました。
そこで、政府は電話線の接続の機械化により、この問題を解決することにしました。そこで一役買ったのが、1923年設立の「富士電気製造株式会社(現在の富士電機株式会社)」でした。海外製の通信機器を使用していましたが、国産化に成功させました。これをきっかけに、国内の通信産業のめざましい発展が始まったのです。富士電気製造株式会社から、通信機器部門が分離し、1935年に「富士通信機製造株式会社」が誕生し、富士通の歴史が始まりました。
設立日 | 1935年6月 |
従業員数 | 129,071人 |
売上収益 | 3兆8577億円 |
研究開発費 | 1,233億円 |
事業 | ①テクノロジーソリューション
②ユビキタスソリューション ③デバイスソリューション |
※2019年度連結概要(2020年3月31日時点)
※従業員数:2020年3月末時点 |
富士通の主な事業
富士通の事業は、①テクノロジーソリューション、②ユビキタスソリューション、③デバイスソリューションの3つで構成されています。
①テクノロジーソリューション
テクノロジーソリューションは、富士通の2019年度売上収益の80.8%も占めている事業です。コンピュータプラットフォーム、ソフトフェア、ネットワーク機器などの販売を行っており、サーバやストレージを使った分だけ月額料金として支払うサブスクリプションモデルなども導入しています。初期費用も抑えられ、使用量に見合った支払いとあってリピート率の向上にも力を入れています。
②ユビキタスソリューション
ユビキタスソリューションは、グループ会社が中心となってパソコンやスマートフォンの開発や製造などを行っている事業です。パソコンはより高品質で高性能な品質にこだわり、デスクトップパソコンやノートパソコンなどを手がけています。スマートフォンは、arrows NXや誰にでも使いやすいらくらくホンシリーズなどを手がけています。
製造や組み立てなどを国内で一貫して行えるのが強みでもあります。
③デバイスソリューション
デバイスソリューションは、グループ会社を中心に、デジタル家電や自動車、スマートフォン、サーバなどに搭載されているLSI(※注1)を提供しています。また、半導体をはじめとする電子部品のほか、電池、リレー、コネクタなどの機器部品なども提供しています。
富士通は、グループ会社を巻き込み、生産・製造・販売を一括して行えることが強みといえます。
(※注1)ICに比べてより集積度の高い複雑な回路をおさめた集積回路のこと。
企業理念
富士通は以下の企業理念を掲げています。
「富士通グループは、常に変革に挑戦し続け 快適で安心できるネットワーク社会づくりに貢献し 豊かで夢のある未来を世界中の人々に提供します」 |
富士通は同社が大切にしている考え方を、Fujitsu Wayと位置付け「パーパス」「大切にする価値観」「行動規範」の3つで構成させています。
パーパスとは、社会における企業の存在意義を意味し、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界を持続可能にすることを示しています。
大切にする価値観は、「挑戦」「信頼」「共感」とし、社員一人ひとりがとるべき行動なども示されています。行動規範は、どのように行動すべきかの原理原則が示されています。
富士通は、企業理念だけではなく、社会の中での存在意義や大切にしている価値観、そして行動に落とし込んで細かく明示されているのが特徴です。
富士通とSDGs
直接関係するSDGs目標
(注1)ZEB…エネルギーの生成と消費の収支がプラスマイナスゼロになる建物のこと
富士通のSDGs推進方法
富士通では、SDGsへの取り組みを戦略的に強化していくため、コーポレート部門・ビジネスプロデュース部門の各役員を含み、メンバーを中心に富士通研究所などの関連部門も一体となり推進しています。
富士通は、以下の6つの重点テーマに特に力を入れています。
①持続可能な食と農業
日本の食・農領域の変革を実現するため、食と農をひとつのチェーン(フードチェーン)と捉えて農業・畜産現場を支えるソリューション「Akisai」を提供しています。
具体的には、モバイル端末やセンサーからのデータ収集・分析・利活用までこれまでの農業熟練者の経験と勘に支えられてきた作業を見える化し、組織マネジメントを実行しています。すでに2013年12月には、Akisaiの新ラインナップとして、日々の活動をデータ収集しデータ分析ができるようになっています。
2015年には、オペレーションの最適化に加えて歩留まりや品質均一化、コスト削減や効率向上なども行っています。
富士通は、このようなソリューションを通して、新しく農業に参入したいと思っている新規参入者に対してもビジネスとして運営できるようにしています。
②高齢化社会における健康、福祉、難病の撲滅
富士通は、1987年からさまざまな公共施設を守る緊急通報端末の販売を開始しています。
全国自治体をはじめ訪問介護事業者、介護施設、高齢者向け住宅、学校・幼稚園・保育園のセキュリティなどロケーションやニーズに合わせたさまざまな緊急通報システムを提供しています。「居住者の見守りソリューション」は、IoTを活用して居住者の生活の様子をプライバシーに配慮しながら24時間見守るサービスです。孤独死などが増加している日本において、居住者ケアを支援するサービスとして「MM総研大賞2017」のスマートソリューション部門ヘルスケアICT分野で最優秀賞を受賞し、高く評価されています。
③イノベーションの促進、ヒューマンセントリックな働き方
通話録音・音声認識ソリューション「VoiceTracking シリーズ」では、最新の音声認識技術を駆使し、業務効率化と応対品質の向上を行っています。
このサービスでは、高品質に全通話録音ができることに加えて、音声認識・音声分析を行えます。また、応対自動評価、顧客特性分析なども行えるため、対応能力の向上やお客様への満足度向上などにも貢献しています。
1通話を同時に10人までリアルタイムにモニタリングができるため、管理者も効率的なマネジメントを行うことが可能になっています。
④エコシステムによるインテリジェントな産業化
富士通グループは、IT企業からDX企業への転換を掲げています。その中で、2019年10月に「DX推進部」を設置しました。DX推進部では、独自で開発した「デジタル革新プログラム」をリリースし、DXビジネスを推進しています。
デジタル革新プログラムとは、ワークショップなどを進めていく中でデジタル化への理解はもちろん、ありたい姿、問題解決へと導いてくものです。デジタル化を推進していきたいけれど何から手をつけていいかわからないお客様に対してなんとか悩みを解決したいという重いから考案されました。
デジタル化が進む中で、困っている企業様に対して「IT人材育成」を育てていく取り組みです。
⑤都市モビリティの高度化、安心安全な都市の実現
富士通は画像認識技術「スマート監視システム」で、リアルタイムで街中監視を行っています。世界では、都市人口の急増や経済活動の複雑化が進む国も多く、交通トラブル以外にも犯罪や災害、事故から人々の生活を守り、安心して暮らせる都市環境を実現することが社会課題となっています。こうした問題を解決するために、都市全体を広範囲に把握するAI技術を使った画像認識により、都市全体を見守ることを実現したサービスです。
また、富士通では、長年の研究や業種、業務ノウハウで培ってきた技術を搭載した最先端AI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」を活用したサービスを2016年に開始しています。
Zinraiを活用したサービスの1つに、「シティワイド サーベイランス」があります。「シティワイドサーベイランス」では、「Zinrai」で構築した認識モデルに基づき、富士通が培ってきた分析や、高速画像処理技術を組み合わせ、監視カメラ映像から車両の車種や車型や車番、人の着衣タイプの識別まで、高精度かつリアルタイムに処理することができます。
このように、AI技術を合わせることにより通常の監視カメラでは実現できない防犯を行うことができ、人々の安全を守っています。
⑥CO2ゼロエミッションの実現、脱炭素社会への貢献
富士通では、1935年の創業以来、「自然と共生するものづくり」を大切にしており、中長期環境ビジョンを設定し、デジタル革新を支えるテクノロジーを活用することで脱炭素社会の実現及び気候変動への適応の貢献、2050年に自らのCO2排出ゼロを実現することを発表しています。
▼脱炭素社会について詳しくはこちら
この目標の実現のため、3つのフェーズに分けて脱炭素化を目指しています。
1つ目のフェーズでは、2020年までは技術利用可能性や経済性を踏まえて、日本では既存省エネ技術を横展開するとともに、AIを活用し新たな省エネ技術を検証を行ってきました。その中で、低炭素エネルギーの利用を進め、海外では欧州を中心に再生可能エネルギーの導入を推進してきました。
そして、現在取り組んでいる2つ目のフェーズにおいては、2030年までに排出削減を加速させるために、AIやZEB化の普及拡大、国内でも利用しやすくなっていることが期待される再生可能エネルギーについて、地域性や経済性を考慮し、戦略的に導入を拡大させ現在も実行しています。
3つ目のフェーズである2030年以降は、革新的省エネ技術を展開・深化し、カーボンクレジットによる基準点を表す距離を補いつつ、再生エネルギーの導入を加速させる計画をしています。
このように、ビジョンを掲げるだけではなく、具体的アプローチも今も実行し続けています。
富士通のSDGsに関する評価
富士通は、さまざまな社会の課題解決を行ってきました。中でも関西学園大学との協力して行った、5Gによる高精細映像伝送、VRやWeb会議システムの技術を活用した、学校や公共施設での遠隔操作、仮想世界を応用した新しい体験学習が高い評価を受けました。
水族館職員による魚への餌やりの様子や、水中映像などをリアルに見ることで遠く離れた場所にいながらも命の大切さに触れる学習となりました。この取り組みが「第4回ジャパンSDGsアワード特別賞(SDGsパートナーシップ賞)」を受賞しました。
このように富士通の得意とする「テクノロジー」で、社会への貢献を行い、高く評価されています。
【引用】https://www.kwansei.ac.jp/news/detail/4042
最後に
富士通は、会社の強みであるAIやIoT、5G、セキュリティ、クラウドなどのテクノロジーを活用することによって社会課題への解決へと導いています。
また、SDGsを「経営戦略のツール」として捉えて、新しいアプリを開発したりと持続可能な取り組みに役立てています。SDGsを新しいビジネスの創出として考えているのが特徴といえるでしょう。
このように、SDGsの「持続可能な社会」を正確に捉えてる企業は、日本だけではなくグローバルでも活躍できる企業といえます。
今後、益々の飛躍が期待できる企業です。