【更新日:2021年6月18日 by 鈴木 智絵】
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前回の内容
顔の見える電力™をコンセプトに日本各地で発電した再生可能エネルギー由来の電力を供給しているみんな電力の大石社長。前回は、顔の見える電力へのこだわりや、顔の見えるライフスタイルによって社会格差を是正したいという高い志について詳しくお話を伺った。格差を肌で感じた地元大阪での経験、電車でソーラーのキーホルダーをつけた女性との出会い、そしておもしろくてもうかることしかしないという誰にでもwin-winな関係性を構築できるような事業作りにかける想いが熱く語られた。
今回はインタビュー第2段として、みんな電力の「今」のこだわり、そして「未来」への新たなビジョンを中心に大石社長に熱い思いを語っていただいた。前回と同様、「適切な電力調達」について考える冷静な視点に注目だ。
インタビュー第1弾はこちらから
「CO2を削減するために再生可能エネルギーを選ぶ」そんなパワフルな選択をより多くの人にしてほしい
ーー前回に引き続き、電力事業に関してお聞きしていきたいと思います。
よろしくお願いします。
ーーまず、今回最初に伺いたいのが、プランの中に再生可能エネルギー100%というプランというのがあるのですが、どういった仕組みになっているのでしょうか?
FIT電気、再生可能エネルギーともに、環境価値を持つ非化石証書(再エネ指定)を組み合わせて再エネ100%を供給しています。仮に再生可能エネルギーの供給量が需要を下回ってしまった場合でも、環境価値を持つ非化石証書を使用しているため、再生可能エネルギー100%にならなくても、CO2の排出量をゼロに抑えられるというプランになります。
電気が足りなくなった場合に供給が滞らないように、供給している電気の大体5~10倍調達していて、供給が需要を上回った場合は他社に融通したり、市場に販売しています。例えばもともと計画していた100のうち、80しか電気が供給されなかった場合、20はどうなるかというと、電線などを保有して電気を送る送配電事業者から供給されます。
みんな電力の再生可能エネルギー100%プランでは、環境価値を持つ非化石証書を組み合わせることでCO2の排出を実質ゼロに抑えることができるようになっているんです。
ーーなるほど。電力供給量の安定という観点から考えると、再生可能エネルギーだけに頼ることは今はしていないんですね。
そうですね。一応、電力を調達するときに、次の日の電気の発電量はどれくらいで需要はどれくらいだろう?と計画しているんです。例えば、明日の天候条件によって風力発電や太陽光発電の発電量を予想しています。でも、次の日急に寒くなって、暖房を使う人が一気に増えたり、天候がよくなったり悪くなったりして発電量が低下したり、計画値にブレ幅が生じることがあります。
そこで、電力を余剰に調達しているのですが、余剰したものはどこから調達したかに関係なく電力として供給されてしまうので、100%再生可能エネルギーで常に供給するということは今はしていないです。
ーー今後、再生可能エネルギー100%というのは可能だと思いますか?
可能か不可能かで言えば理論上は可能だと思います。しかし、当然風が吹かなかったり、天気が悪くなったりして、供給量がゼロになってしまう可能性もなくはないのです。つまり、1つの電源に依存してしまうと、何かあったときに、私たちの生活が全停止してしまうというリスクがあります。ですので、安全保障上、いくつかの電源を確保しておくのはすごく大事で。再生可能エネルギー100%は理論上は可能でしょうけど、それを本当に実行するのはかなりリスクがあると思いますね。
ーー再生可能エネルギーに付随して、脱炭素に関しても議論されることが多くなってきていますよね。
脱炭素に関しては、1つの目標として、社会全体で取り組まなければならない問題だと思います。その一歩として、まず、CO2をこれ以上増やさないということで再生可能エネルギーによる発電方法を選ぶ人を増やしたいと思っているんです。「CO2を減らすために私は再生可能エネルギー由来の電力を買うんだ」というモチベーションはすごくパワフルですよね。
環境に負荷をかけない徹底した電力調達ポリシー
ーー再生可能エネルギーを調達する際、発電所の建設などによる環境への負荷などについてはどうお考えでしょうか?
みんな電力では調達ポリシーというのがあって、発電時に環境負荷が大きいと判断した発電所の電気は買わないことにしています。
例えば、バイオマス発電では、ゴミを燃やして発電しているんですが、中にはわざわざ山を切り崩してそれを燃やして発電したものをバイオマスだと言って売っているところもあるんです。つまり、再生可能エネルギーと見せかけて、本当は環境破壊している事業者もいるんです。
みんな電力ではトレーサビリティがあるので、どこからどんな電力が来ているのか一目でわかりますし、そもそも再生可能エネルギーと言いながら環境破壊やその他汚染などをしている事業者の電気は買っていませんから、その点安心して電気を買っていただけるようになっています。
ーー顔の見える電力™というのがみんな電力の1番のメッセージで、それがあるからこそ生まれる信頼や、責任感があるんですね。
そうですね。どこから調達しているか明記しているということは、どこにお金を支払っているかを明らかにしているということですからね。確実に適切な再生可能エネルギーの発電所に消費者からの声とかお金を届けたいですよね。
ーー再生可能エネルギーの調達に関して他にこだわっているところはありますか?
グローバルとのギャップのなかでいかに適切な再生可能エネルギーを調達するかに関しては特に注意を払っています。
例えば、日本の法律では、これは再生可能エネルギーとされているものも、外国では認められていないものも多いんですね。例えば、調達してきた電気が大型水力で発電されたものだと、生物多様性とかに大きなダメージがあって、環境負荷が高いとみなされて再生可能エネルギーとしては使えないとか海外ではよくあるんです。しかし、日本ではそういうものも再生可能エネルギーとして環境価値をくっつけてしまうんです。
ーー環境破壊をしているのに、環境価値をつけて再生可能エネルギーとして売られている電力があるということですか?
そうです。そういったことがないように、みんな電力ではグローバルスタンダードとの差を埋めるべく、トレーサビリティをつけたり、電源構成を全て公開したりしているんです。
熱効率性向上から土壌改善まで。顔の見えるライフスタイルで世界を変える!
ーー再生可能エネルギー以外で注目しているエネルギー源はありますか?
熱ですね。例えば、私たちの住宅環境って、今の最先端の建築技術を使えば、夏でも冷房を付けなくても熱を逃してくれる家や、暖房を入れなくても、陽の光だけで十分あったかくなる家など作れるんです。でも、そういう環境に住んでいる人って少ないですよね。だから、住宅や施設の熱の効率性をあげていくことで、エネルギーを極力使わない=CO2を出さない生活スタイルが出来上がっていくと思っていて。
なので、熱の効率性には大変興味があります。
ーーそのほかに注目していることや、これからの展望はありますか?
再生可能エネルギーの促進はそもそも「CO2を出さない」ということに注目しているんですが、次に注目しているのが、「排出されてしまったCO2を取り除く」ための取り組みです。
今のところ1番ポテンシャルがあると言われているのが、「大地」です。
そもそも大気中に放出されたCO2って、ただ放出されっぱなしではなくて、植物が取り込んで大地に炭素として還元していくというエコシステムがあるんですよね。でも、それがなぜうまくいっていないか?その原因の1つとして人間がCO2を出しすぎているということもあるんですが、それだけでなく、植物によって取り込まれたCO2を吸収できない劣悪な土壌環境というのもあげられます。
この劣悪な土壌環境の原因は、農薬です。農薬の使用により、土壌細菌がいなくなって、地中に炭素が留まりづらい環境が増えているんです。なので、私たちがこれからやろうとしている取り組みは土壌の再建事業です。
ーーCO2を出さないだけでなく、出てしまったCO2を吸収していく事業もこれから考えていらっしゃるんですね。
そうなんです。土壌を改善することで、CO2の吸収ポテンシャルが上がり環境問題にも貢献できますし、単純にいい野菜が取れますし。それから、有機の土を触るだけで、アグリヒーリングというリラックス効果があるということも証明されていて、有機土壌に触れる機会が増えれば増えるほど、心の再生にもつながるんです。だから、土壌を改善することで、心が再生され、食物が再生され、地球が再生されていく。循環が見えるようになったら、私たちの生活ってすごく満たされたものになるんじゃないでしょうか。
まとめ
日本国内の再生可能エネルギーの現状、そして、政府からの環境認証に対する疑問やグローバルスタンダードへの注目、そして新しい事業分野への着目はみんな電力のこれからの可能性を垣間見せてくれる、そんなインタビューであった。熱い志を持ちながら、電力の調達や電源構成に関しては冷静でシビアな目線を持ち合わせているみんな電力。再生可能エネルギーが脱炭素社会の実現に向けて大きな要となっている中で、これから大きな注目を浴びることは間違いないだろう。