支え合いで持続可能な社会を|宮城県石巻市《SDGs未来都市特集》

#SDGs未来都市#SDGs目標17#エネルギー#地方創生#持続可能#環境#自然災害#都市#高齢者 2021.09.22

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【更新日:2021年9月22日 by 三浦莉奈

SDGs未来都市。聞いたことはあるけれど実際にどのような取り組みをしているのか、どのような街なのか、知っている人は多くないだろう。
この特集では、「SDGsで変わる街、変わらない想い」をテーマにSDGs未来都市に選定された自治体にインタビューを実施し、街の魅力やSDGsの取り組みについて伺う。

今回は、石巻市のSDGs地域戦略推進室の柴田さんにインタビューを実施した。

復興と、さらなる飛躍を石巻から

ーー街の概要について教えてください。

石巻市は、宮城県北東部の北上川の河口に位置し、555㎢の市域を有する人口約14万人の風光明媚な都市です。東北地方の中では年間を通して比較的温暖で降雪量も少なく、日照時間も長い地域です。

2011年3月の東日本大震災により甚大な被害を受けた本市は、震災以降、被災者の住まいの整備を始めとした復旧・復興事業を最優先事項として進め、現在は復興事業の完遂と復興後の更なる飛躍を目指し、各種事業を進めているところです。

ーー街の魅力について教えてください。

世界三大漁場の一つと呼ばれる金華山沖漁場が近くにあり、石巻魚市場では年間を通して200種以上の魚が水揚げされます。同施設の荷捌き施設上屋根は世界一の長さ(876m)を誇り、現在、ギネス記録に申請中です。

中心市街地では「マンガのまち石巻」の中核施設「石ノ森萬画館」やかわまち交流拠点の「いしのまき元気いちば」を中心に多くの観光客が訪れるほか、復旧・復興事業で整備した半島沿岸部拠点エリアの観光物産交流施設などは、新たな観光スポットとして賑わい創出の一翼を担っています。

ーー今までに、街の中でどのような課題がありましたか?

「震災に起因したコミュニティの崩壊・復興公営住宅における高齢者の孤立化」と「高齢者の移動手段」の2点が課題でした。

「最大の被災地から未来都市石巻」の実現を目指して

ーーSDGs未来都市では、どのような街に変わっていくのでしょうか?

「ハイブリッドリユース事業」による地域経済の活性化や、「グリーンスローモビリティ」などによる環境にやさしい新たな移動手段の構築、「コミュニケーションロボット」による高齢者の孤立防止や外出機会の創出などに取り組み、地域の中に相手を思いやる「おたがいさま」の声があふれる支え合いのまちづくりを推進することにより、「最大の被災地から未来都市石巻」を実現します。

ーーそのためにどのような取り組みをしていますか?

大きく3つの取り組みをしています。

1つ目は、ハイブリッドリユース事業です。これは、使われなくなったハイブリッド自動車の基幹ユニット(モーター、バッテリーなど)をリユースし、電気自動車などとして再製品化する事業です。ステークホルダーである大手企業と地元大学との連携により、市内企業への技術習得を進め、地域における新産業として定着させることで地域経済の活性化を図ります。

2つ目は、グリーンスローモビリティの活用です。被災者の移転先として新たに整備した新市街地などにおいて、ハイブリッドリユース事業によって生産された電気自動車を活用し、グリーンスローモビリティ(時速20km未満で走る4人乗り以上の電気自動車)などでのカーシェアリングを行います。

3つ目は、コミュニケーションロボットによる高齢者支援です。スマートフォンなどの操作が苦手な高齢者のデジタルデバイド解消のため、会話形式で相手の状況に応じた支援が可能なコミュニケーションロボットを高齢者宅などへ設置することで、高齢者の外出機会の創出や孤立防止を図ります。

ーーSDGsの取り組みにかける想いを教えてください。

先ほどの3つの取り組みやSDGsの普及啓発を通じて、市民のSDGsに対する意識が高まり、支え合いによる持続可能な地域社会が実現することを目指しています。

ーーSDGs未来都市の取り組みの具体的な成果について教えてください。

SDGsに関する出前講座の依頼の受付件数が増加傾向にあり、市民の関心が高まっていると感じています。実際に、市民のSDGsに対する認知度は、令和元年には19.1%、令和2年には26.5%に増加しました。これまでのSDGs普及啓発に係る取組の成果と考えます。その後、「マンガでわかる石巻・SDGsを学ぶ本」の作成・配布やシンポジウムの開催などに取り組んでおり、令和3年度はさらに増加するものと見込んでいます。
また、グリーンスローモビリティは地域のカーシェア会が運行していますが、令和3年3月の運行開始セレモニー以降、新たに10名の新規会員が加入となりました。

パートナーシップでSDGsの推進を

ーーこれからのSDGs推進の戦略、展望について教えてください。

SDGsのさらなる効果的な普及啓発を図るため、「いしのまきSDGsパートナー」制度を創設し、企業や団体などと連携した普及啓発に取り組んでいます。

今後は、より積極的にSDGsの達成に向けた取り組みを行う企業や団体などを登録する制度を創設し、近隣市町と共に圏域として取り組んでいくため協議を重ねていきます。また、地元金融機関によるSDGs推進の取組と連携し、登録企業などに対する金融面での支援などを実現することで、自律的好循環の形成を目指します。

さいごに

石巻市は東日本大震災で甚大な被害を受けた自治体の一つであるが、「復興」と「持続可能な未来を創ること」は通じるものがあると感じた。

また、自治体単位でSDGsの取り組みを行うことで、企業よりも暮らしに寄り添うかたちで人々へSDGsの普及ができると考えた。

SDGsが他人ごとではなく、自分ごととして意識改革ができれば、17つの目標の達成により近づくだろう。

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