先端技術の活用で目指す 「スマートシティ加賀」 |石川県加賀市 《SDGs未来都市特集》

#SDGs未来都市#地方創生#技術#高齢者 2021.10.21

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SDGs未来都市。聞いたことはあるけれど実際にどのような取り組みをしているのか、どのような街なのか、知らない人も多いだろう。

この特集では、「SDGsで変わる街、変わらない想い」をテーマにSDGs未来都市に選定された自治体にインタビューを実施し、街の魅力やSDGsの取り組みについて紹介する。

今回は、加賀市政策戦略部スマートシティ課の岡村さんに未来都市の取り組みについて伺った。

自然・歴史・伝統を感じられる観光都市

【提供:加賀市】

ーー加賀市の概要を教えてください。

加賀市は石川県の南西部に位置する、人口約65,000人の豊かな自然に恵まれた観光都市です。藩政期には、加賀藩の支藩である大聖寺藩城下町として治められ、日本遺産に認定された「北前船の里 橋立」や山代温泉・山中温泉・片山津温泉の三温泉による「加賀温泉郷」を抱え、年間約200万人の観光客が訪れています。
また、山中漆器・九谷焼といった全国的にも秀でた伝統工芸の発祥の地であり、現在は市内従事者の約3割がものづくりに従事する、ものづくりのまちでもあります。

ーー温泉街としても有名な加賀市ですが、担当者視点で魅力はなんだと思いますか?

共同浴場である総湯を中心とした古い温泉街の町並みを残す山代温泉・豊かな自然と伝統文化が色濃く残る山中温泉・潟湖柴山潟の湖畔に温泉街が広がる片山津温泉の、趣の異なる三温泉に加え、城下町や宿場町の風情を残す町並み、山中漆器や九谷焼の伝統工芸、豊かな自然から育まれるブドウやナシなどの農産物、新鮮な日本海の蟹や甘えびといった海産物などを有する、自然・歴史・伝統が息づく観光都市です。

ーー今までに、加賀市ではどのような課題がありましたか?

市町村合併を繰り返した歴史から、核となる地区が市内に点在する多極分散型の都市構造となっており、行政運営が非効率となっています。また、少子高齢化が急速に進んでおり、人口は、昭和60年の約8万人をピークに半世紀の間に半減すると予想され、2014年に日本創成会議が示した「消滅可能性都市」の一つに指摘されました。
主要産業である観光業は、昭和の最盛期には約400万人の観光客が本市を訪れましたが、バブル崩壊や旅行スタイルの変化への対応が遅れたことで、観光客数が激減し、昨今は最盛期の半分程度の約200万人となっています。さらに、令和2年については、新型コロナウイルス感染症の影響で約100万人に減少しました。

AI、IoT、ロボットの活用で暮らしを便利に

【提供:加賀市】

ーーSDGs未来都市では、どのような街に変わっていくのでしょうか?

将来的に人々があらゆる面でより良い暮らしや幸福につながるよう、常にユーザー目線に立った検討を行い「人間中心の未来社会の実現」に努め、スマート化による「市民の生活の質の向上」、「来訪者の満足度の向上」、「稼ぐ力の向上」を図るとともに、「世界首長誓約/日本」の誓約事項を着実に推進することで、「官民協働のスマートシティによる持続可能なまち」の実現を目指します。

ーー「官民協働のスマートシティによる持続可能なまち」の実現のため、実際にどのような取り組みをしていますか?

人口減少や少子高齢化による担い手不足、地域活力の低下といった様々な地域課題を解決するため、AIやIoT、ロボットなどの先端技術を広く活用することによって、市民生活の質の向上や地域経済の発展を図る「スマートシティ加賀」の構築を目指して取り組みを進めています。
また、市が100%出資する加賀市総合サービス株式会社と共に、自治体新電力事業を通して生み出される利益をもとに、「加賀市版RE100」、「エネルギーの地産地消」、「地域内経済循環」の実現に取り組んでいます。

ーー「スマートシティ加賀」の構築をはじめ、さまざまなSDGsの取り組みを行っていらっしゃいますが、そうした取り組みにかける想いを教えてください。

さまざまな地域課題が解決され、市民の暮らしが便利かつ安心できるものであるとともに産業も活性化している持続可能な都市であるためには、先端技術が社会に備わった「スマートシティ」を目指していくことが必要と考えています。

ーーSDGs未来都市の取り組みの具体的な成果について教えてください。

先端技術が市内産業に浸透し、市内企業の付加価値の向上が図られています。例えば、農業分野では、ブドウやナシ、いちごの生育にIoTを導入しており、生育が難しい高級ブドウであるルビーロマンの商品化率を、データを活用することにより約50%から約70%に向上させ、初競りでは2年連続で100万円を超える最高額で落札されるなど、その効果も表れてきています。

また、プログラミング教育やコンピュータクラブハウス加賀、ロボレーブ国際大会の開催などを通して、デジタル化に対応した産業人材が育成されており、小学生がプログラミングの全国大会で特別賞を受賞したり、中学生が入館管理システムを自力で構築したりするなど、子どもたちが活躍を見せています。

さらに、MaaSの推進により、ワンスオンリーの手続きで市民や観光客の利便性が向上され、公共交通の利用者数が増加してきています。

【提供:加賀市】コンピュータクラブハウス加賀

【提供:加賀市】ロボレーブ国際大会

「スマートシティ加賀」の実現に向けて

【提供:加賀市】

ーー加賀市のこれからのSDGs推進の戦略、展望について教えてください。

令和2年度に、人間中心の未来社会の実現をめざす「スマートシティ加賀構想」を着実に進めていくため、重点的に推進すべき施策の目標・方向性・工程を示す「スマートシティ加賀推進計画」を策定しました。これらの構想と計画に基づき、市民や事業者等の皆様と力を合わせ、「スマートシティ加賀」の実現に取り組んでいます。

さいごに

加賀市にインタビューをするまでは、地方では高齢化が進んでいる印象が強く、AIやIoTが進んでいる印象はまったくと言って良いほどなかった。

しかし、今回の取材で見えてきたのは、今の時代に即した新しい地方創生のかたちだった。加賀市がモデルケースとなることで、他の市町村も追随する未来はそう遠くないだろう。

さまざまな技術を取り入れながらも、自然や伝統を守り、観光都市として輝く「スマートシティ加賀」のこれからに注目したい。

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