日本水産株式会社(以下、ニッスイ)は日本有数の水産資源を中心とした食品メーカーです。
世界各地に事業拠点を有し、世界の資源国と協力しながら幅広い事業を展開しています。
1911年の創業から100年以上、おいしい水産資源を家庭の食卓へ届けてきたニッスイ。
海の豊かな恵みを守っていくために、どのような取り組みを行っているのでしょうか。
この記事では、ニッスイの事業内容からSDGsの戦略や活動まで幅広く紹介していきます。
ニッスイのビジョン/事業
ニッスイの概要
ニッスイは1911年3月に一隻の漁船を竣工したことで創業しました。1943年に前身となる日本海洋漁業統制株式会社が設立され、1945年に社名を日本水産株式会社に改名しました。現在は世界各国に事業拠点を設け、各地域のグループ会社と連携して多くの事業を展開しています。
フィッシュソーセージやねり製品といった水産物を活かした製品から、冷凍食品やレトルト食品まで幅広い商品を製造しています。
「ギョニソ」としておなじみの「おさかなのソーセージ」や、今年で30周年を迎えた「大きな大きな焼きおにぎり」などの定番商品のアレンジレシピも多数公開されており、おいしい食事をサポートしています。
創業 | 明治44年(1911年) |
設立 | 昭和18年(1943年) |
資本金 | 30,685百万円 |
従業員数 | 1,247名(個別) 9,431名(連結) |
事業 | 水産、食品、ファインケミカル、物流、海洋関連・エンジニアリング |
ニッスイの主な事業
ニッスイは世界各国の資源国とのグローバルサプライチェーンを構築することで漁業・養殖生産から加工、販売まで行っています。
食品事業では家庭用の食品から業務用の食品を製造しており、海外でも積極的な事業展開を進めています。
ファインケミカル事業では、1980年から約40年にわたりイワシなどの青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)の研究や生産・商品化に取組んでいます。
その他にも、メーカー物流のノウハウを活かした「低音一貫物流サービス」の提供や、長年培ってきた海王関連技術を活かした海洋サバイバル訓練施設の開設など、多岐にわたる事業を展開しています。
ニッスイの基本理念
ニッスイは「水の水道におけるは、水産物の生産配給における理想である」を創業の理念としています。
この理念には世界各市場を水道管のように繋ぎ、配給の無駄がないようにすべての人に需要に応じた水産物を届けていくという想いが込められています。
この創業理念をもとに、ニッスイの経営基本方針が掲げられ、社会課題の解決に取り組むことを宣言しています。
ニッスイとSDGs
直接かかわるSDGs
ニッスイは「サスティナビリティレポート2020」を発表しています。
このレポートにおいて、ニッスイは多様な社会ニーズ・要請に対応するため、取り組むべき29項目の課題を抽出し、以下の3つの分野のマテリアリティを設定しています。
①豊かな海を守り、持続可能な水産資源の利用と調達を推進する
②安全・安心で健康的な生活に貢献する
③社会課題に取り組む多様な人材が活躍できる企業を目指す
ニッスイは漁業・養殖池において資源を持続的に利用していくため、特に水産資源に直接関わる取り組みに力を入れています。
ここではニッスイのSDGsへの取り組み事例を一部ご紹介します。
①豊かな海を守り、持続可能な水産資源の利用と調達を推進する
(対応するSDGs目標:6,8,11,12,13,14,15,17)
海のめぐみを受けて事業を行うニッスイにとって、海はもちろん、その海の豊かさを育む森や川の保全も重要な課題となっています。そこで、「生物多様性の保全」に取り組んでいます。
「森・川・海」の連携保全として、「とっとり共生の森」や宇津貫緑地の保全活動を行っています。
また、ニッスイは天然の水産資源を持続的に利用するための取り組みに注力しています。
水産物の消費量は世界規模で拡大しており、世界の天然水産資源は枯渇化が進んでいます。そこで、ニッスイは国内外で養殖事業に力を入れています。
ニッスイグループの洋食関連事業所は国内に34箇所、海外に19箇所の計53拠点にも上ります。
海外ではサケ・マス、国内では、ブリ、マグロ、ギンザケ、サバ、フグなどの養殖事業を展開しており、養殖技術のイノベーションにも同時に取り組んでいます。
取り組みの1つにAI・IoT技術の活用が挙げられます。ニッスイは日本電気㈱と養殖魚の体長などの測定を自動化するソリューションを共同開発しました。人が魚に触れずに測定できるため、魚の健康状態を損なわず、短時間で制度の高い測定を行えるようになっています。
さらに、2018年3月から国内産の完全養殖本マグロを出荷するなど、今後の水産物消費の需要増加を見込んだ天然水産資源を損なわない漁業大きな取り組みの1つの柱になっています。
②安全・安心で健康的な生活に貢献する
(対応するSDGs目標:2,3,12,17)
ニッスイはサプライチェーン全体を通したフードロスの削減にも取り組んでいます。
賞味期限表示を見直し、品質が保たれているかどうかの保存試験を行った上で賞味期限の大幅延長に取り組んでいます。
さらに、2008年から支援の必要な人々に食料を提供するNPO法人セカンドハーベスト・ジャパンへ冷凍食品を寄贈しています。2020年度には9トンもの食品を寄贈しており、フードロス削減に加えて福祉施設の支援にも貢献しています。
③社会課題に取り組む多様な人材が活躍できる企業を目指す
(対応するSDGs目標:5,8)
ニッスイは多様性を積極的に取り入れることで組織の活性化を目指しています。
主な取り組みにジェンダーバランスの健全化が挙げられます。
2021年1月には30% Club Japan(サーティパーセントクラブ・ジャパン)の活動趣旨に賛同、加入し、女性の活躍を推進しています。
30% Club Japanは、企業の意思決定機関における健全なジェンダーバランスがガバナンス強化や持続的成長の促進に寄与するという考えのもと、女性の経営参画を支援しています。
ニッスイは2019年4月に女性活躍の行動計画を策定しています。
ここでは
- 新卒採用者(大卒・院卒)に占める女性の割合を30%以上とする
- 営業部門及び生産部門で働く女性の人数を20%以上アップする
- 女性の管理職および係長の人数を15%以上アップする
といった具体的な目標が定められており、2022年までの目標実現を目指しています。
ここで紹介しきれなかったニッスイのSDGsへの取り組みはこちら
外部からの評価
ニッスイは東京証券取引所の上場企業の中から、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む企業として、「健康経営銘柄2021」に選定されています。
これは原則として1業種から1社選定するもので、ニッスイは農林・水産業において3年連続で選定されています。
まとめ
ニッスイは限りある水産資源を守り、豊かな海のめぐみをより多くの食卓に届けるため、さまざまな取り組みを進めていることがわかりました。
特に養殖事業の推進など、長年積み上げてきた海洋に関する知識を活かした取り組みが限りある資源の持続可能性に大きく貢献しており、ニッスイが紡いできた技術のつながりを感じました。
一方で、その事業の性質上、プラスチックの削減や水の使用量、二酸化炭素排出量の削減など、まだ大きな成果をあげていない取り組みも見られました。
水産事業でのサスティナビリティへの取り組みに加えて、食品事業でも積極的にSDGsに取り組んでいけるのか。
ニッスイの今後の活躍に期待が高まります。