近年、社会問題や環境問題などを含んだテーマである「SDGs」が消費者や投資家たちの間で話題になっています。
そうした中で、企業がSDGsへの関心を向けることは社会的責任を果たすものとして認知され、消費者や投資家たちから信頼を得ることができますが、その時に重要になってくる「CSR調達」というものをご存知でしょうか。
この記事では、CSR調達とはどのような概念でどのようなメリットがあるのか、また導入している企業はあるのかといった内容をわかりやすく解説していきます。
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CSRとは
CSRとは、「Corporate Social Responsibility」という言葉の頭文字をとった言葉で、日本語では「企業の社会的責任」のことを指します。
CSRについて詳しくはこちら▼
CSR調達とは
CSR調達の概要
CSR調達とは、企業などが物品の調達先の選定条件や調達条件を設定する際に、価格だけでなく環境への配慮や人権への配慮といったCSR=社会的責任の観点から基準を設定し、企業や品物を選択することです。
近年では、企業が、目先だけの利益を追求することに伴い環境破壊などをすることは全世界から非常に厳しい目が向けられるようになってきています。自社だけでなく、CSR調達をする取引先にとっても社会的責任の観点を持つことが重要になってきているのです。
CSR調達の2つのメリット
CSR調達をすることは発注側の企業にとっても大きなメリットになります。
主なメリットを2点紹介します。
リスク回避
企業はCSR調達に取り組むことで、リスクを回避することができます。
企業は活動を続けていく中で、地域に対して流出する可能性のある有害物質の管理や展開する事業拠点における人権への対応など日々リスクに直面しています。
しかし、CSR調達に取り組むことでそのリスクを洗い出し、定期的に評価することで事前に対抗策を講じることができます。
事前にリスクを回避することができるため、今後起きうる可能性のあった事故や苦情を減らせるといったメリットがあるといえるでしょう。
参照:CSR調達とは?社会貢献につながる健全な調達で企業価値を高めよう | DAiKO+PLUS(プラス)
企業のブランディング向上
企業はCSR調達を行うことで、取引先や株主などのステークホルダーからの信頼を得られるといったメリットがあります。
CSR調達の方針などを自社サイトのHPを使い外部に発信することで、社会的責任を果たそうとする意識を発信することができます。
すると、企業と関わりのあるステークホルダーにとっては社会問題に対して能動的であることが理解でき、企業イメージが向上します。
CSR調達を意識することは、企業にとっては多少の負担がかかります。しかし、現状の取引や調査期間のアンケートなどに適切に対応することで、新たな取引先を獲得しやすくなるというメリットもあります。
参照:CSR調達とは?社会貢献につながる健全な調達で企業価値を高めよう | DAiKO+PLUS(プラス)
CSR調達を実現するために企業が行なうべきこと
現場の効率化
CSR調達に取り組むには現場の効率化を推進していくことが大切です。
まずはじめに、購買業務の調達プロセスを可視化し、どの程度の業務量や課題があるのか、可視化することから始めます。
それにより、購買部門全体の業務が可視化され、各従業員の業務が効率化してこそ、CSR調達を実現するための準備が整います。
CSR調達に取り組む上では、業務をいかに効率化させるかが重要になってきます。自社での業務を今一度見直し、CSR調達実現を目指してみましょう。
CSR調達ガイドラインを制定する
CSR調達を実現するために企業が行うこととして、現場の効率化と合わせてCSR調達ガイドラインを策定することも大切です。
CSR調達ガイドラインとは、各企業が社会的責任を果たしていくための取り組み事項をまとめたものであり、明確なルールがあるわけではありません。
従来、このガイドラインは「情報公開」求められていましたが、それに加えて「倫理的な視点」から見て製品が正しく調達・製造されているのかということが重要視されるようになりました。
そのため、CSR調達ガイドラインを策定する際には、自社だけでなく取引先にも共有することが大切になってきています。他業種や他企業のCSR調達ガイドラインを参考に、自社にあったガイドラインを作成してみましょう。
参照:CSR調達とは? 調達先にCSRを求める意義とガイドラインの作成方法 – カオナビ人事用語集 (kaonavi.jp)
CSR調達に取り組む企業事例 3選
CSR調達に積極的に取り組んでいる企業の取り組み事例を紹介します。
帝人株式会社
帝人株式会社は「Qualityof Lifeの向上」「社会と共に」「社員と共に」の実現に向け、この3つの軸をCSR活動に取り組む上でのテーマに設定しています。
CSR調達に関しては、取引先調査の対象企業を順次拡大しており、2013年度は国内購買部門の主要な取引先から、総務・人事部門および海外グループ会社の主要な取引先まで対象としています。
また、調査の結果についても、5段階で格付けをしており、「問題がない」と定義しているⅠ~Ⅲの企業数比率は97%、調達金額の比率では99.7%に達しているなど、さまざまなCSR調達に関する取り組みをおこなってます。
ブラザーグループ
ブラザーグループは、部品・材料を調達する取引先へCSR調達の考え方を共有するために、「調達方針」と「CSR調達基準」を公開しています。
また、2019年1月にはRBA(Responsible Business Alliance)に加盟することで、人権・労働・安全衛生・地球環境への影響を削減するなどのサプライチェーンにおけるリスク評価と是正への体制を強化しています。
さらに、取引先に対して定期的に、CSRアンケートや、強制労働の防止を目的とした奴隷の強制労働に関するアンケート、製錬業者に紛争地域で採掘された鉱物資源が使用されていないかを確認する紛争鉱物調査への協力をお願いしたり、共有した「調達方針」と「CSR調達基準」の反映状況を確認しているなど、取引先とともにCSR調達を推進しています。
参照:責任あるサプライチェーン|社会|サステナビリティ|ブラザー
Daiwa House Group
Daiwa House Groupは、建設業法が定める「建設工事の請負契約の原則」や公正な契約の遵守に努めています。
また、下請法が適用されるサプライヤーなどの取引先に対しても法の精神に則った取引を行うとともに、ICTの活用などにより、確実かつ効率的なCSR調達の管理体制の構築に取り組んでいます。
さらに今後、海外展開が急速に進んでいくなか、Daiwa House Groupは取引先と共にCSR調達の推進を通じて、持続可能な社会の実現に努めていく方針を掲げています。
参照:社会との取り組み|サステナビリティ|大和ハウスグループ
まとめ
今回はCSR調達について徹底解説しました。
CSR調達は、自社だけでなく、取引先の企業へも社会的責任の観点を持たせることが重要になってきます。
この記事を参考により多くの企業がCSR調達を推進していただき、企業の社会的価値を高めていきましょう。