【更新日:2021年9月15日 by 三浦莉奈】
株式会社伊藤園(以下、伊藤園)は「お〜いお茶」などの緑茶飲料を長きに渡って販売し、多くの日本人に愛される日本を代表する飲料メーカーです。
創立から50年以上に渡り、お茶のブランドを築き上げ、茶葉関連や飲料関連の事業を日々成長させています。
伊藤園は、SDGsにおいてもその取り組みが注目されています。外務省による第一回SDGsアワード(2017)では、SDGsパートナーシップ賞(特別賞)を受賞し、国内ではSDGsのモデルケースとして参考にしておくとよいでしょう。
このページでは、伊藤園の事業内容からSDGsの戦略や活動まで幅広く紹介していきます。
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伊藤園のビジョン / 事業
伊藤園の概要
伊藤園は、創立してから約55年ほどの企業。現在では5000人以上の従業員を抱え、4000億円近くの売上高を誇る国内を代表する飲料メーカーです。
設立日 | 1966年8月22日 |
従業員数 | 5,403名 |
売上高 | 3,777億円(伊藤園単独) |
事業 | ①茶葉関連事業 ②飲料関連事業 |
※2020年4月時点
伊藤園の主な事業
伊藤園の事業は、上記の通り①茶葉関連事業 ②飲料関連事業にわけられます。
茶葉関連事業では「お~いお茶」だけでなく、むぎ茶や、ペットボトル販売で好評だった「TEA’S TEA NEW YORK」のティーバック製品やインス
タント製品を販売しています。原材料から製造・物流まで製品管理を徹底し、消費者のニーズに対応してきました。
飲料関連事業では、「お~いお茶」が代表的です。コカ・コーラが販売する「綾鷹」、キリンホールディングスが販売する「生茶」など他の飲料メーカーがさまざまな緑茶飲料を開発・販売する中で、その人気を維持してきました。
特に「お~いお茶」は「ナチュラルヘルシーRTD緑茶飲料(最新年間売り上げ)」販売実績世界一でギネス世界記録に認定されました。認定対象となった2018年の「お~いお茶」ブランド販売実績は過去最高の9,000万ケースを突破、認定された年間売上は推定19億6,680万ドルにも登ります。
また、緑茶以外にも「 TEAs’TEA」や「evian」など、さまざまなブランドを展開しています。
伊藤園の経営理念は「お客様第一主義」
伊藤園は、グループにかかわるすべての方々を「お客様」と位置づけ、それぞれの意見やニーズに向き合いながら、成長することが経営の根幹と考え「お客様第一主義」を経営理念に掲げています。
近年では、自社の顧客だけでなく、投資家や従業員、取引先など、多角的に関係を構築し、社会の中での企業価値を高める重要性が増しています。伊藤園は、さまざまなステークホルダーに対して役員や社員がチーム伊藤園として一丸となってひたむきに考えていくとしており、時代にあった経営理念と言えるでしょう。
伊藤園とSDGs
直接関係するSDGs目標
株式会社伊藤園が着目する社会課題
伊藤園は、2020年12月に「伊藤園統合レポート2020」を公表し、SDGsやESG,CSRに関わる戦略を発表し、着目する社会課題が公表されています。
伊藤園は、ESG重要課題7つを推進テーマに設定し、SDGsと絡めながらそれぞれの課題の解決を目指しています。
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伊藤園は、この中でも重要課題として「消費者課題」「コミュニティ・社会」「地球環境」の3つを掲げ、具体的なアクションを設定しています。
①消費者課題
日本は、1970年に「高齢化社会」に突入し、2007年には「超高齢社会」に突入しました。平均寿命は、2019年には女性87.45歳、男性81.41歳と伸び続け、「人生100年時代」といわれる超高齢化社会へと移行しています。
人生設計のあり方が大きく変革する今、伊藤園は健康価値の追求や商品の品質管理を徹底し、SDGsに取り組んでいます。
②コミュニティ・社会
伊藤園はコミュニティや社会の課題を設定し、「お茶」を通して解決しようとしています。
特に近年では、アメリカにおける人種差別問題や、従業員の過労死問題など、人間の人権に関する問題が浮き彫りになっています。伊藤園は、事業活動を通じてこの課題の解決を目指しています。
文化の継続も重要な課題です。多くの日本の伝統的な産業は、どのように継承するかが大きな問題になっています。国内を代表する緑茶飲料メーカーとして、緑茶の文化を引き継ぐことも大きな目標となっています。
さらに持続可能なお茶の生産を確保するために、荒茶(茶畑でとれたままのお茶)の生産地を確保し、次世代にお茶の文化を継承していくことが重要です。農林水産省によると茶の栽培面積は、生産者の高齢化、小区画茶園や傾斜地茶園等の条件が不利な茶園の廃園等が進行したことから、平成12(2000)年の5万haから平成24(2012)年の4万6千haまで、9%(5千ha)減少しています。
参考:農林水産省
③地球環境
最後に課題として設定されているのは「地球環境」です。気候変動に対応した生産体制を築くだけでなく、容器の包装や廃棄物のリサイクル、生物多様性の保全などがテーマとして掲げられています。
伊藤園のSDGs戦略
株式会社伊藤園は、第一回SDGsアワードで、SDGsパートナーシップ賞(特別賞)を受賞。主力事業である茶畑から茶殻まで一貫した生産体制を構築するだけでなく、それ以外にも幅広い目標に貢献していることが評価されています。
伊藤園のSDGs戦略はなぜ評価されているのでしょうか。
ESG, CSR, SDGsのそれぞれの視点をバランスよく組み合わせた全体図
伊藤園のSDGs戦略として重要なのはESGやCSR、SDGsをバランス良く組み合わせ、全体図を描いていることでしょう。
同社が公開した「伊藤園統合レポート2020」では、ESGに関わる全体的なアプローチを設定し、さらに36個の具体的な課題が明記されています。
それぞれの課題はSDGsとも紐付けられ、「お客様第一主義」に対応するべく、研究、企画・開発、調達、製造・物流、営業・販売までのすべての事業で価値を創造する取り組みが設定されています。
同社の統合レポートで掲げられている7つのテーマは、近年注目されるESG投資の、環境、社会、ガバナンスを含めてバランスよく設定されており、多くの企業にとって見本となる事例と言える。
積極的な発信
伊藤園がSDGsを推進する上で評価されるポイントは、発信体制にもあります。
伊藤園は「伊藤園統合レポート 2020」だけでなく、 CSRやESGに関する具体的な実績・目標、「伊藤園グループ人権方針」「伊藤園グループ中長期環境目標」など、さまざまな情報を積極的に開示しています。
また、Webサイト上でもCSR/ESGのページを設け、具体的な取り組みを紹介しています。
▼詳しくはこちら
今後、企業が社会の中での価値を向上していくためには、積極的な情報発信が欠かせません。積極的な情報発信によって、投資家からの評価だけでなく、従業員の共感、SDGs意識が高まる学生からの応募増など副次的な効果も期待できます。
伊藤園のSDGsの取り組み
一部ではありますが、伊藤園のSDGsの取り組みを紹介します。
「消費者課題」への取り組み
伊藤園は消費者課題に対応するべく、ライフスタイルに合わせた製品を積極的に発売しています。
少子高齢化やライフスタイルの多様化などの観点から、伊藤園は、お茶に含まれる成分を徹底的に科学分析し、お茶を継続的に摂取することで食事の脂肪吸収を抑制し、体脂肪を軽減する効果があることを確認し、その上でさまざまな商品を展開しています。
例えば、お茶に含まれるカフェインの過剰摂取を防ぐために、カフェイン摂取を控えたい方向けの商品「お〜いお茶カフェインゼロ」も販売を開始しました。また、体脂肪を減らすガレート型カテキンを340mg含む「お~いお茶 濃い茶」も販売し、機能性表示食品に認定されています。
以上のように、伊藤園はお茶を通して健康寿命伸ばし、生活習慣病などの多様化していくライフスタイルへの課題解決へと着手しています。
(参考:機能性表示食品「お~いお茶 濃い茶」8月5日(月)より販売開始 | ニュースリリース)
「コミュニティ・社会」への取り組み
伊藤園は、茶葉生産の需要は伸びているが高齢化が進み後継ぎが少なくなってしまった農業に対しても「茶産地育成事業」を行っています。
既存の茶農家を対象に伊藤園向けの茶葉を生産し、全量買取しています。地元の事業者が主体となり自治体と協力しながら、新たな大規模な茶園を作り、技術指導などを行うことで農業の発展、地域コミュニケーションにも力を入れています。
さらに伊藤園は、2010年から売上の一部を日本全国の環境活動に寄付する「お茶で日本を美しく。キャンペーン」を実施しています。すでに9回目の実施になり、寄付エリアは全国にも渡ります。
(参考:お~いお茶「お茶で日本を美しく。」キャンペーン 実施期間:1月27日(月)~ 3月31日(火) | ニュースリリース)
「地球環境」への取り組み
2020年9月に「伊藤園グループ プラスチックに関する方針」では、ペットボトルに使用するリサイクル素材等の割合を100%にすることを表明しています。気候変動問題に関してはCO2削減を2030年までに2018年度比でCO2排出量を総量で26%削減を目指すなど掲げ、2019年度のCO2排出量は前年と比較して-7.9%の削減となりました。
また、工場から排出される水分を含んだ茶殻を腐敗させることなく保存、輸送し、そのまま工場製品の原材料として使用するリサイクルシステム「茶殻サイクルシステム」を開発しています。
まさに、茶畑から茶殻まで一貫した取り組みを行うのが伊藤園の強みと言えます。
(参考:環境 | CSR(社会・環境)、茶殻リサイクルシステム)
細かい詳細は伊藤園の統合レポートや、以下をご覧ください。