《徹底解説》SDGs×農業の関係性とは|世界と日本の農業の現状

#SDGs目標15#SDGs目標2#SDGs目標8#農業 2021.05.19

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【更新日:2021年9月11日 by 森あゆみ

日本はかつて食料自給率が73%(1965年)と高水準の数値を出していました。しかし自由貿易や就農者の高齢化などの問題から年々自給率は低下し、2019年には38%にまで低下しました。食料自給率の低下は農業の持続性、さらに食の安定共有や生産職の雇用などに影響するため持続可能な農業を考えることは重要な課題になります。そこで今回は

農業とSDGsについて紐解いていきたいと思います。

SDGsと農業の関係性

私たちが食べている食べ物のほとんどは農業によって生産されたものです。生産が不安定な農業体制は飢餓や貧困問題に直結しており、SDGsの中でも農業の安定が喫緊の課題とされています。

また、それだけでなく、農業を行う上で汚染される土壌や、農業のための森林伐採は生物多様性に多大な被害を与えるため、環境問題にも関わっています。

また雇用の創出を担う産業としても農業は欠かせず、持続可能な農業はSDGsを達成するために社会に必要不可欠と言えます。

つまり、農業はさまざまな社会問題を解決する上で、重要な産業であり、SDGsの中でも注目されています。SDGsでも注目されている産業の1つです。どのようにSDGsと関係しているのかSDGsの目標別に紐解いていきましょう。

SDGsとは

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。

2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。

SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。

SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。

▼各目標の詳細は以下の画像をクリック

▼SDGsについて詳しくはこちら

SDGsと農業の関係性

飢餓問題と食糧提供

SDGs目標2では「飢餓をゼロに」を目標に掲げており、ターゲット2.4では「2030 年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害 に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。」と明記し飢餓の観点から農業の持続性を高めています。

▼詳しくはこちらをご覧ください

さらに農業に関して以下のターゲットを掲げることで飢餓を防ぐ取り組みをしています。

  • 農業生産性及び所得の倍増
  • 強靭(レジリエント)な農業を実践する
  • 農業に関する遺伝資源・伝統的知識の公正かつ公平な分配。
  • 農業インフラへの投資拡大
  • 世界の農産物市場における貿易制限や歪みを是正及び゙防止
  • 食料備蓄などの市場情報への適時のアクセスを容易化

これらのターゲットを実現するために農業分野以外の技術を産学連携で導入することは欠かせません。さらに国外の飢餓問題に対しては栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)との連携で解決に取り組んでいます。

自然環境の保持

SDGs目標15では「陸の豊かさも守ろう」を目標に掲げており、ターゲット15.3では「2030年までに、砂漠化に対処し、砂漠化、干ばつ及び洪水の影響を受けた土地などの劣化した土 地と土壌を回復し、土地劣化に荷担しない世界の達成に尽力する。」と明記し陸域生態系を守る観点から農業のあり方を唱えています。

▼詳しくはこちらをご覧ください

さらに農業に関する以下のターゲットを掲げることで陸域の自然保全に取り組んでいます。

  • 農業が与えた土地劣化の土壌回復を行う
  • 農業を行う周辺の陸域生態系の持続可能な利用

農業は自然環境と人を繋ぎ、私たちに地域生態系の恩恵を感じさせてくれます。農業を持続的に行うことは周辺の環境を持続的に保全することに繋がり、再び農産物として私たちに恩恵として返ってきます。

雇用の創出

SDGs目標8では「働きがいも 経済成長も」を目標に掲げており、ターゲット8.3では「生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成⻑を奨励する」と明記し、農業を雇用創出の重要な場としてさらなる発展へと取り組んでいます。

▼詳しくはこちらをご覧ください

世界の農業の現状

農業は世界の国内総生産(GDP)の4%を占めるなど経済成長として欠かせない産業です。しかし近年発生件数多くなっている気候変動や産業活動による水汚染は農業に大きなダメージを与え、経済成長までも停滞させています。そこで世界の農業の現状はどういったものかについて詳細に迫りましょう。

技術向上による農業の効率化と供給の安定

現在の農業は遺伝子組み換えの技術により、農業は以前と比べて大幅に効率化されました。

この変化は、20世紀中ごろ欧米で始まった「緑の革命」です。緑の革命とは〜

最近では、科学技術の発展により、水耕栽培の安定や品種改良の技術向上、土壌の栄養素管理などが達成され、厳しい環境下でも農産物の供給安定ができるようになりました。こういった技術向上は途上国にも伝達され、今まで困難だった地域でも農業を行えるようになっています。アジアやヨーロッパ、北米では栽培技術の向上により、また、アフリカと南米では農地の拡大によって農産物の供給量が増加しています。

しかし、生産量は世界全体で増えているものの、供給先は先進国に偏っており、農産物の分配は大きな問題となっています。

先進国への過剰分配

先進国では農産物の過剰分配により、食品ロスが大きな問題となっています。

▼食品ロスに関してはこちら▼

さらに、過食による肥満などの健康問題も飽食から引き起こされていると考えられており、環境問題だけでなく、私たちの生活にとって食料の問題はさまざまな問題を連鎖的に引き起こしています。

この農作物をはじめとした食糧の過剰分配をなくすには、先進国への供給量を減らすだけで解決する問題ではありません。先進国に住む人々の消費パターンから抜本的に変えていく必要性があり、私たちに一人ひとりが日々の消費行動を変えいく姿勢が大切です。

参照:グローバリゼーション下の食糧問題

開発途上国での農産物を含めた食糧不足

先進国で食料の飽和状態が問題となっている一方で、開発途上国では農産物の生産量は上がっていながら、供給量は足りていないという現状があります。

開発途上国において、農産物をはじめとした食料が足りていないのは絶対的貧困層の人たちです。しかし、絶対的貧困層は収入が少なく、そもそも市場に参入することができません。つまり、絶対的貧困層の農産物に対する需要が正しくカウントされておらず、本当に必要な人に農産物が届いていないのが現状です。

飢餓や貧困問題を解決するには、現在、市場に参入できていない絶対的貧困層にいる人たちも含めた新しい農産物市場の形成が喫緊の課題となっています。

このように、農産物の需要と供給の均衡を保つためには、消費パターンを変えていくことと、農産物を含めた食料の再分配を行うことが重要となっています。

日本の農業の現状

新規就農者の減少

また、新規就農者は農業機材や農業に関する知識の不足により、新規参入から経営安定までに時間がかかり、離農する確率が高いため、行政や周囲の農家からのさらなるサポートが重要視されています。

農業自給率の低下

多くの農家は経営が困難なため、離農者も多く新規就農者は農業を行いづらい環境になっています。さらに農業で重要な利水権や機械導入のコストなど新規就農者が抱えるトラブルも多く、就農者が減少し続ける農業の衰退をもたらしました。さらにTPPなどの貿易の自由化により国内の農業産業が市場競争で負けるなど課題が多い現状です。

農産物の輸出

日本の農産物は健康的なイメージやおいしさが評判で海外での需要が高まっており、輸出量は増加傾向にあります。輸出先の3/4はアジア地域が占めており1位から順に香港、台湾、中国がランキングしています。

就農者の変化

就農者の数は減少しているだけでなく、形態の変化も見られます。かつては農地を所有している者は自然と専業農家になる事が多く見られました。しかし収入の不安定さなどから平日は本職を勤め、土日に趣味や自給のために農業を行う非農家が増えています。

農業xSDGsの取り組み事例

営農型太陽光発電

営農型太陽光発電とは太陽光発電と農業を組み合わせた次世代の農業の仕組みで、発電した電気をもとに収穫を行ったり、電気を販売することで課題であった専業農家の収入の不安定がなくなる画期的なアイデアになります。

詳しくはこちらから▼

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/einou.html

農泊

全国の農山漁村において伝統的な生活体験をしながら地域住民と交流できるシステムです。

農泊を通じて地域特有の農業や漁業を経験でき、子供連れから大人まで多くの事を学ぶことができます。また地域食材を堪能し、誰でも農業×SDGsを身近にできる魅力を持っています。

詳しくはこちら▼

https://nohaku.net

株式会社坂ノ途中

関西近郊で農産物の販売を行う「株式会社坂ノ途中」は、【未来からの前借り、やめましょう】をコンセプトに、新規就農者が環境負荷の小さい農業を広げる持続可能な農業を進めています。

また、自社農場「やまのあいだファーム」も経営し、環境負荷の小さい農業を実践する農業者のサポート体制も充実させています。

詳しくはこちら▼

坂ノ途中 (on-the-slope.com)

まとめ

AIを駆使した農業が行われるほど農業も時代と共に進化しています。かつて農業はネガティブなイメージを抱かれやすく、若者の農業離れが課題でした。しかし近年の農業の発展はそのようなイメージを抱かせず、むしろ近代的な印象を与えます。SDGsは農業をさらに発展させ経済での存在感を強めるのではないでしょうか。

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