【更新日:2021年9月15日 by 三浦莉奈】
サントリーホールディングス株式会社(以下、サントリー)はソフトドリンクやビールなど、幅広いジャンルの飲料を製造・販売している飲料メーカーです。
代表的な商品は「伊右衛門」「なっちゃん」「ザ・プレミアム・モルツ」「金麦」などです。みなさんも、1度はサントリーの製品を飲んだことがあるのではないでしょうか。
「水と生きる」をグループの約束に掲げ、飲料事業にとって重要な水資源を大切にすることをお客様、地域社会、自然環境に対して誓っているサントリー。
このページではサントリーの事業内容からSDGsの戦略、活動まで幅広く紹介していきます。
サントリーの事業/ビジョン
サントリーの概要
サントリーは1899年に「鳥井商店」の名前で創業し、1921年に「株式会社 寿屋」を創立しました。
「日本人に合う洋酒をつくる」を目標に「赤玉ポートワイン」「サントリーウイスキー角瓶」などの代表的な商品を売り出していきました。
1963年には「サントリービール」を発売し、社名を現在の「サントリー株式会社」へと変更しました。
現在は、原点となる酒類の製造販売に留まらず、清涼飲料事業や食品事業も展開しています。
さらに、酒類の製造過程で培われた研究開発のノウハウを活かした健康食品やスキンケア化粧品の開発も行っています。
加えて、カフェとバーを融合させた「プロント」や総菜類の製造・販売・レストラン経営を行う「とんかつまい泉」など、サントリーグループとして外食事業も積極的に展開しています。創業 | 1899年 |
設立 | 2009年2月16日 |
資本金 | 700億円 |
事業内容 | 食品、スピリッツ、ビール、ワインなど飲料類の製造・販売
健康食品の製造・販売 外食・過食・花・サービス事業、機能会社の運営 それらに伴う研究開発 |
従業員数 | 40,044人(2020年12月31日現在) |
連結売上収益₍酒税控除後₎ | 21,083億円(2020年12月31日現在) |
サントリーの主な事業
先述の通り、サントリーは清涼飲料水の製造販売といった食品事業だけでなく、健康食品事業や研究開発事業にも積極的に取り組んでいます。
食品事業
「サントリー天然水」「BOSS」「伊右衛門」「なっちゃん」などのコアブランドを中心に日本の清涼飲料市場を牽引しています。
スピリッツ事業
「山崎」「白州」「響」などの国内の代表的なウイスキーを製造販売しています。
「ほろよい」「ストロングゼロ」といったチューハイ・カクテルや「鏡月」などの焼酎にも力を入れています。
ビール事業
「ザ・プレミアム・モルツ」「金麦」などのビール類の製造販売も手掛けています。
サントリーのビール飲料は国内で生産している全ての商品に地下深くからくみ上げた天然水を100%使用しています。
ワイン事業
国内での高品質なワインづくりを行うと共に、グローバルなワインビジネスも展開しています。
国産ぶどうを100%使用した「登美の丘ワイナリー」シリーズや、消費者の安全・安心・健康志向にお応えする、「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」などを製造販売しています。
健康食品事業
創業当時から、おいしいお酒を製造するために長年培われてきた研究開発のノウハウを活かし、健康・ライフサイエンス分野にも参入しました。
「自然のちから」シリーズを展開し、「セサミンEX」「DHA&EPA+セサミンEX」「ロコモア」などお客様の健康ニーズに合わせた製品を取り揃えています。
外食事業
お酒と食の豊かで楽しい世界を生み出し、お客さまに新しい飲食シーンを提案するためにグループ会社として「プロント」「とんかつまい泉」といった外食事業を展開しています。
研究開発事業
酒類製造から始まるさまざまな商品開発の過程で、微生物や酵素の利用技術、蒸溜技術を深化させてきたサントリーは、新しい健康素材の探索・健康効能の研究、新たな花卉品種の開発、水科学など様々な研究開発を行ってきました。
「美味しさ」・「健康」・「水・花・環境」をテーマに新価値創造につながる研究開発を推進しています。
また、「水科学研究所」を有しており、水のサステナビリティ実現を目指して、水の循環や水質形成といった基盤研究や「水」に関する最新の情報の発信を行っています。
サントリーの理念体系
サントリーは理念体系の要として「水と生きる」を約束に掲げています。
飲料事業にとって水資源は欠かせない存在です。
この約束のもとで「わたしたちの使命」「わたしたちの志」「わたしたちの価値観」が設定されています。
「わたしたちの使命」では、人間としての生命が輝く社会を実現するため、「人と自然と響きあう」を使命に、人々の潤いのある生活と持続可能な社会の実現を目指すことが示されています。
「わたしたちの志」では、「Growing for Good」をテーマに、今よりもさらに信頼できる企業として社会のために成長し続けることを表明しています。
「わたしたちの価値観」では、「やってみなはれ」「利益三分主義」という創業当時からの精神に基づいた価値観を提示しています。常に新しいことに挑戦し続けるチャレンジ精神を忘れず、事業の成功をステークホルダーや社会に貢献し互いに成長していく関係づくりを目指しています。
サントリーとSDGs
直接かかわるSDGs
サントリーはとりわけ重要度の高い取り組み目標として
目標6「安全な水とトイレを世界中に」
目標3「全ての人に健康と福祉を」
目標12「つくる責任つかう責任」
目標13「気候変動に具体的な対策を」
の4つを特定しました。
そのなかでも、飲料事業の原材料となる水に関する目標6「水・衛生」を最重要課題に位置付けています。
サントリーが取り組む7つの課題
サントリーは「サステナビリティ・ビジョン」を策定し、サスティナビリティに関する7つのテーマを設定しています。
サスティナビリティに関する7つのテーマ
①水
②CO₂
③原料
④容器・包装
⑤健康
⑥人権
⑦生活文化
一部にはなりますが、7つのテーマに関連するサントリーのSDGsへの取り組みを紹介していきます。
①水
関連するSDGs
目標6「安全な水とトイレを世界中に」
目標15「陸の豊かさも守ろう」
目標4「質の高い教育をみんなに」
サントリーはグループ環境基本方針の最上位に「水のサステナビリティの実現」を掲げ、2017年にサントリーグループ『水理念』を策定しています。
具体的な取り組みの1つが「天然水の森」活動です。
2003年から開始したこの取り組みは、水源涵養機能の向上と生物多様性の保全を目標にしています。
サントリー水科学研究所を中心に、科学的な根拠に基づいた継続的な活動を行っており、現在「天然水の森」は全国15都府県21ヵ所、約12,000haまで拡大しています。
2019年には「国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を涵養」という2020年の目標を1年前倒しで達成しました。
この他にも、野鳥を保護する「愛鳥活動」や、「サントリー天然水」のふるさとで開かれる自然体験プログラムなどの次世代環境教育「水育」にも取り組んでいます。
特に「水育」に関してはベトナムやインドネシア、タイでも実施しており、事業だけではなく環境活動もグローバルに取り組んでいます。
サントリーの「水育」について詳しくはこちら
②CO₂
関連するSDGs
目標13「気候変動に具体的な対策を」
目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」
目標12「つくる責任つかう責任」
「人と自然と響きあう」を使命に掲げるサントリーにとって、地球環境は大切な経営基盤です。
サントリーグループでは「環境ビジョン2050」を策定し、2050年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出の実質ゼロを目指しています。
工場で、最新の省エネ技術や再生可能エネルギーを活用することにより、CO₂削減に取り組んでいます。
利根川ビール工場では、自家発電で生じた熱を回収して熱源として使用するコジェネレーション(熱電併給)システムで得た電力を、別の工場で使用する「電力託送」を開始しました。
天然水南アルプス白州工場では、発電能力約490kWの太陽光パネルを設置しました。
国内の工場だけではなく、海外の工場でも環境に配慮した取り組みが行われています。
メキシコのテキーラ工場では蒸留工程の熱回収率を向上させる「貫流ボイラー」を採用しています。
スペインのカルカヘンテ工場では発電能力約737kWの太陽光パネルを設置しました。
また、現在「サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場」を2021年春の稼働開始に向けて建設中です。
長野県大町市に位置するこの工場は、再生可能エネルギーやバイオマス燃料を用いたボイラーの導入、再生可能エネルギー由来の電力調達などにより“CO2排出量ゼロ工場”として、世界トップクラスの環境配慮型工場となる予定です。
サントリー天然水 北アルプス信濃の森工場 イメージ写真
③原料
関連するSDGs
目標12「つくる責任つかう責任」
目標15「陸の豊かさも守ろう」
目標10「人や国の不平等をなくそう」
サントリーは2011年に「サステナブル調達基本方針」を制定し、サプライチェーン全体で持続可能な生産調達活動と人権の遵守を始めとするサスティナビリティを推進していくことを表明しています。
新規サプライヤーに対しては、「サステナブル調達基本方針」に基づいて人権・法令順守・環境などの分野で持続可能な社会への配慮がされているか、スクリーニングを実施しています。
さらに、2017年6月には「サントリーグループ・サプライヤーガイドライン」を制定しました。サントリーグループとサプライヤー間で同じ倫理的価値観が共有されていることを確認するため、主要取引先への方針説明会での共有が行われています。
2019年には世界最大のサプライヤーエシカル情報の共有プラットフォームである「Sedex」に加入しています。
サプライヤーに対してもSedexへの加盟や情報共有の要請を行い、倫理的なサプライチェーンの構築を目指しています。
④容器・包装
関連するSDGs
目標12「つくる責任つかう責任」
目標13「気候変動に具体的な対策を」
目標14「海の豊かさを守ろう」
サントリーは「プラスチック基本方針」を策定し、資源の循環を推進しています。
この方針は「2020年度グッドデザイン賞」において、「グッドデザイン・ベスト100」に選出されました。
サントリーでは、2030年までにグループが使用するすべてのペットボトルについて、リサイクル素材と植物由来素材に100%切り替え、化石由来原料の新規使用をゼロにするという目標を掲げています。
特にペットボトル容器に関しては、独自の「2R+B」戦略に基づき取り組んでいます。
「2R+B」はReduce、Recycle、Bioを表しています。
この戦略に基づいて、容器の軽量化やリサイクル、自然分解可能な植物由来樹脂の積極的活用に取り組んでいます。
2020年4月現在、国産最軽量キャップ、国産最薄ラベル(再生PET樹脂80%使用)、国産最軽量ペットボトル(植物由来原料30%使用)を実現しています。
⑤健康
関連するSDGs
目標3「全ての人に健康と福祉を」
さまざまな酒類を販売するサントリーは、アルコール関連問題の予防に努めるとともに、適正飲酒の考え方を普及させることによって、人々のより健康で文化的な生活に貢献しています。
また、日本ならではの「ナチュラル&ヘルシー」な飲料や健康食品を開発しています。
代表的な製品に、アルコールの影響を気にせずにビールの風味を楽しめるノンアルコール飲料「オールフリー」や脂肪の吸収を抑える「黒烏龍茶OTPP」があります。
お客様の健康ニーズに即した製品を開発販売することで、健康で文化的な生活の実現を目指しています。
⑥人権
関連するSDGs
目標12「つくる責任つかう責任」
目標8「働きがいも経済成長も」
目標10「人や国の不平等をなくそう」
目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
サントリーは、ビジネスに関わるすべての人の人権を尊重する取り組みを推進しています。
2019年7月に「サントリーグループ人権方針」を制定しています。
また、2011年にダイバーシティ推進室を設置、2012年には「国境を超える」「性別を超える」「ハンディキャップを超える」「年齢を超える」という4つの重点領域を設定しています。
さらに、LGBTに関する取り組みも推進しています。LGBTハンドブックの作成、全社員へのeラーニングなどを実施し、性的マイノリティに関する取り組みの評価指標「PRIDE指標」において最高評価「ゴールド」を受賞しています。
⑦生活文化
関連するSDGs
17のSDGs目標すべて
創業精神「利益三分主義」に基づき、社会福祉、芸術・文化・学術、スポーツ、次世代育成をはじめとする貢献活動に取り組んでいます。
サントリー美術館やサントリーホールを運営し、文化芸術の発展に貢献するとともに、ラグビーやバレーボールなどで企業スポーツにも参加しています。
コロナ禍では、国内外の工場で蒸溜したアルコールの一部を、消毒用アルコールとして医療機関等に提供しました。世界各地で、医療関係者、地域社会の皆様に対し、製品の提供や寄付などさまざまな支援活動を展開しています。
ここでは紹介しきれなかったサントリーのサスティナビリティに関する情報はこちら
まとめ
サントリーは飲料事業に欠かせない「水」を守り育むために、SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」を中心に見据えた多様な取り組みを行っています。
「水と生きる」企業ならではの活動で、これからも社会に潤いを与えていきたいという思いが伝わってきました。
「人と自然と響きあう」社会を実現するためにひたむきに課題解決に取り組むサントリー。
より一層の活躍に期待が高まります。