【更新日:2021年9月11日 by 森あゆみ】
近年、目にする機会が増えたSDGsは2015年に国連で採択されました。一見すると、歴史が浅いSDGsですが、実はSDGsが策定される以前には国際的な開発目標としてMDGsが存在していました。
SDGsが何かを知る上でも、MDGsとのつながりを知ることが重要です。
この記事では、SDGsを理解する上でも重要なMDGsについて解説していきます。
見出し
MDGsとは
MDGsとは、「Millennium Development Goals」の頭文字を組み合わせたものであり、ミレニアム開発目標と呼ばれています。
MDGsは、2000年9月にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで「国連ミレニアム宣言」として採択され、2015年を目処に開発途上国における社会問題を解決するための世界共通の開発目標として設定されました。
MDGsの8つの目標とターゲット
MDGsは、2015年までを達成期限と設定し、「21世紀の国際社会の目標」として、8つの目標と21のターゲット、そして60の指標が定められています。開発途上国が抱えている社会問題を、国連や政府が取組主体となって解決するという意図が含まれています。
MDGsでは、極度の貧困や飢餓の撲滅など、開発途上国の現状改善のため8つの目標があり、それぞれに取り組む際の指標となるターゲットが設定されています。
目標とターゲット | 指標 |
目標1:極度の貧困及び飢餓の撲滅 | |
ターゲット1
2015年までに1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる。 |
1.1日1ドル未満で生活する人口の割合
2.貧困格差の比率:貧困度別の発生頻度 3.国内消費全体のうち、最も貧しい5分の1の人口が占める割合 |
ターゲット2
2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合を1990年の水準の半数に減少させる。 |
4.平均体重を下回る5歳未満の子供の割合
5.カロリー消費が必要最低限のレベル未満の人口の割合 |
目標2:普遍的初等教育の達成 | |
ターゲット3
2015年までに、全ての子供が男女の区別なく初等教育の全課程を修了できるようにする。 |
6.初等教育の就学率
7.第1段階に就学した生徒が第5段階まで到達する割合 8.15~24歳の識字率 |
目標3:男女病棟及び女性の地位強化の推進 | |
ターゲット4
可能な限り2005年までに初等・中等教育における男女格差を解消し、2015年までにすべての教育レベルにおける男女格差を解消する。 |
9.初等・中等・高等教育における男子生徒に対する女子生徒の比率
10.15~24歳の男性就学者に対する識字就学者の比率 11.非農業部門における女性賃金労働者の割合 12.国会における女性議員の割合 |
目標4:乳幼児死亡率の削減 | |
ターゲット5
2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減する。 |
13.5歳未満児の死亡率
14.乳児死亡率 15.はしかに免疫のある1歳児の割合 |
目標5:妊産婦の健康の改善 | |
ターゲット6
2015年までに妊産婦の死亡率を1990年の水準の4分の1に削減する。 |
16.妊産婦死亡率
17.医師・助産婦の立ち会いによる出産の割合 |
目標6:HIV/AIDS、マラリア、その他の疾病との闘い | |
ターゲット7
HIV/AIDSの拡大を2015年までに食い止め、その後反転させる。 |
18.15~24歳の妊婦のHIV感染
19.避妊具普及率 20.HIV/AIDSにより孤児となった子供の数 |
ターゲット8
マラリア及びその他の主要な疾病の発生を2015年までに食い止め、その後発生率を下げる。 |
21.マラリア感染及びマラリアによる死亡率
22.マラリア危険地域において、有効なマラリア予防及び治療処置を受けている人口の割合 23.結核の感染及び結核による死亡率 24.DOTS(短期化学療法を用いた直接監視下治療)の下で発見され、治療された結核患者の割合 |
目標7:環境の持続可能性確保 | |
ターゲット9
持続可能な開発の原則を国家政策及びプログラムにもりこみ、環境資源の損失を減らす。 |
25.国土面積に占める森林面積の割合
26.生物多様性の維持のための保護対象面積 27.エネルギー使用単位当たりGDP(エネルギー効率) 28.二酸化炭素排出量(一人当たり) (及び、全世界的な大気汚染に関する二つの数値:オゾン減少量及び温室効果ガスの累積量) |
ターゲット10
2015年までに、安全な飲料水を継続的に利用できない人々の割合を半減する。 |
29.良好な水源を継続して利用できる人口の割合 |
ターゲット11
2020年までに、少なくとも1億人のスラム住民の生活を大幅に改善する。 |
30.良好な衛生を利用できる人々の割合
31.安定した職に就いている人々の割合 (以上の指標のうちのいくつかについては、都市部と農村部に分けたほうが、スラム住民の生活改善度をモニターする上で適切といえるかもしれない。) |
目標8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進 | |
ターゲット12
さらに開放的で、ルールに基づく、予測可能でかつ差別的でない貿易及び金融システムを構築する。(良い統治、開発及び貧困削減を国内的及び国際的に公約することを含む。) ターゲット13 後発開発途上国の特別なニーズに対処する。 ((1)後発開発途上国からの輸入品に対する無関税・無枠、 (2)HIPC諸国に対する債務救済及び二国間債務の帳消しのための拡大プログラム、 (3)貧困削減にコミットしている諸国に対するより寛大なODA、を含む) ターゲット14 内陸国及び小島嶼開発途上国の特別なニーズに対処する。 (バルバトス・プログラム及び第22回総会の規定に基づき) ターゲット15 債務を長期的に持続可能なものとするための国内的及び国際的措置により、 開発途上国の債務問題に包括的に取り組む。 |
以下に列挙された指標のいくつかについては後発開発途上国、 アフリカ、内陸国、小島嶼開発途上国それぞれ別々に個別にモニターされる。
政府開発援助 32.DACドナー諸国のODA純量の対GNI比(世界ODAの0.7%目標、後発開発途上国向け0.15%目標) 33.基礎的社会サービスに対するODAの割合(基礎教育、基礎保健、栄養、安全な飲料水、 及び衛生) 34.アンタイド化されたODAの割合 35.小島嶼開発途上国における環境向けODAの割合 36.内陸国における運輸部門向けODAの割合 市場アクセス 37.無税・無枠の輸出割合(価格ベース。武器を除く。) 38.農産品、繊維及び衣料品に対する平均関税及び数量割り当て 39.OECD諸国における国内農業補助金及び輸出農業補助金 40.貿易キャパシティ育成支援のためのODAの割合 債務の持続可能性 41.帳消しにされた公的二国間HIPC債務の割合 42.商品及びサービスの輸出に対する債務のパーセンテージ 43.債務救済として供与されたODAの割合 44.HIPCの決定時点及び完了時点に到達した国数 |
ターゲット16
開発途上国と協力し、若者がそれなりに生産的な仕事に就くための戦略を策定・実施する。 |
45.15~24歳の失業率 |
ターゲット17
製薬会社と協力し、開発途上国において、人々が安価で、必要不可欠な薬品を入手できるようにする。 |
46.安価で必要不可欠な薬品を持続的に入手できる人口の割合 |
ターゲット18
民間企業と協力し、特に情報、通信といった新技術による利益が得られるようにする。 |
47.1000人当たりの電話回線数
48.1000人当たりのパソコン数 その他の指標は追って決定される。 |
引用:https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/intl/mdgs/about.html
MDGsの達成度
MDGsの達成状況は、2015年7月6日に発表された「MDGs報告2015」にまとめられています。最終評価として、潘基文(パン・ギムン)事務総長は、「極度の貧困をあと一世代でこの世からなくすところまで来た」と成果を強調しました。
出典:https://www.unic.or.jp/files/e530aa2b8e54dca3f48fd84004cf8297.pdf
「MDGs報告2015」13ページ目成果チャートをみると、課題が残っていることを表す赤いマスは4マス、それに比べ達成への取り組みが積極的に行われたことを表す緑色のマスは22マスと各地域で高い成果をあげたことがわかります。
MDGsの成果例 | |
・開発途上国で極度の貧困に暮らす(1日1ドル25セント未満で暮らす)人々の割合 →1990年の47%から14%に減少
・初等教育就学率 →2000年の83%から91%に改善 ・開発途上地域における男女格差 →174ヵ国のほぼ90%の女性が政治に参加する基盤獲得 |
これらは、既に目標達成済み又は達成目途がたっています。
参照:https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/15009/
MDGsの課題
「MDGs報告2015」をみてもわかるとおり、MDGsではかなりの成果を上げました。一方、MDGsは多くの成果を上げたと同時に、未解決な課題を世界に突きつけました。
例えば、男女間の不平等が続き、就業機会など公私の意思決定において未だに差別に直面しています。また、最貧困層と最富裕層、都市部と農村部の格差が広がっています。他にも、二酸化炭素排出量は1990年以降50%増加し、気候や環境はますます悪化しているなど多くの課題が取り残されています。
SDGsとMDGsの違い
2015年までにMDGsでも達成できなかった課題や、新たに生まれる社会問題や環境問題に対応するために、SDGsが誕生しました。つまり、MDGsを発展させたのがSDGsです。
では、具体的に何を発展させたのかここから見ていきましょう。
SDGsは途上国だけでなく、先進国を含めた目標
SDGsは途上国だけでなく、先進国を含めた全ての国々を対象に、課題を解決するための目標が掲げられています。
MDGsの8個の目標は、途上国に対して設定された目標ばかりであったため、先進国の課題を含んでいませんでした。
また、その目標自体が先進国主導で決められていたということもあり、途上国の意見が反映されていないという問題点が指摘されていました。
そこで、各国の現状を把握しつつ、世界情勢の変化を反映するなど途上国だけでなく、先進国を含めた包括的な目標が設定されたのです。
SDGsはターゲットが大幅に増えた
SDGsはMDGsと比べ、目標は8から17に増えただけでなく、ターゲットの数も21から169へとターゲットの数が大幅に増えています。
なぜなら、SDGsの理念として「地球上の誰一人として取り残さない」を掲げており、持続的な社会を構築していくために、多岐にわたるターゲットを設定しました。
例えば、事例としてMDGs目標1「極度の貧困と飢餓の撲滅」と、SDGs目標1「貧困をなくそう」は、どちらも貧困がテーマになっていますが、MDGsではターゲットが3つなのに対し、SDGsではターゲットが7個もあります。
このようにSDGsとMDGsの違いについては、目標だけではなく、多くの人間を対象にターゲットの数が増えていることも頭に入れておきましょう。
参照:https://ethicame.com/shop/information/SDGs34
SDGsは企業や個人でも取り組みやすくなった
SDGsとMDGsの大きな違いとしてあげられるのが、企業や個人単位でも取り組みやすくなったことです。
MDGsは途上国向けの目標だったこともあり、国連や政府といった取組主体を中心とした対策が多かったため、民間企業や個人が関心を持つまでにいたりませんでした。
一方、SDGsは国連や政府といった取組主体はもちろんのこと、民間企業や個人などとの連携が求められています。
例えば、目標11「住み続けられる街づくり」や目標12「つくる責任 つかう責任」など経済活動に関わる内容であったり、個人の日常生活に関わる内容であることがわかります。
SDGsは「地球上の誰一人として取り残さない目標」としていることから、私たち一人ひとりが取り組みやすい内容となっているのです。
まとめ
今回は、SDGsの元になったMDGsについて詳しく解説しました。
MDGsが設定されて以来、世界の国々と人々はその達成に向けて課題解決に取り組みました。
しかし、現代における環境問題や社会問題は途上国だけにとどまらず先進国を含む全世界が直面している課題となった浮き彫りとなりました。
そうした中で生まれたのが「SDGs」です。
SDGsはもはやMDGsと違って私たち一人ひとりが担い手です。その達成のためにも、目の前できる取り組みからはじめてみましょう。