【更新日:2021年10月13日 by おざけん】
栄光ゼミナールなどの学習塾事業を展開している株式会社栄光。
今回の取材では「栄光サイエンスラボ」「栄光ロボットアカデミー」について詳しくお話を伺った。
「学ぶ力が未来を創る。」という指導理念を掲げている栄光では、SDGsをどのように捉え、教育に落とし込んでいるのか。
栄光が教育を通して描く未来はどのようなものか考えていきたい。
実体験による失敗から学ぶ楽しさを。
ーーまず自己紹介をお願いします。
富田:栄光ロボットアカデミーの富田と申します。よろしくお願いいたします。今年で7年目になる栄光ロボットアカデミーですが、プロジェクトの立ち上げから参加しています。
大島:栄光サイエンスラボを担当している大島です。よろしくお願いします。現在は、首都圏全14教室で実施しています。
ーー栄光サイエンスラボと栄光ロボットアカデミーの立ち上げのきっかけを教えて下さい。
富田:歴史としては栄光サイエンスラボのほうが長く、栄光サイエンスラボが2008年に、栄光ロボットアカデミーを2015年に立ち上げました。
大島:栄光サイエンスラボは栄光ゼミナールでの経験がベースになっています。
立ち上げに携わった社員が、理科の授業の際に、テキストや黒板の前で勉強するだけではなく、実際に豆電球が光る様子、水溶液の色が変わる様子などの体験を取り入れたところ、そのときの子どもたちの様子や学習の執着度の深さが普段と全然違ったんです。そこで、座学だけではなく、子どもたちが本当に求めている学習を提供できないかと考え、新規事業として科学実験の専門教室である現在の栄光サイエンスラボが誕生しました。
富田:栄光ロボットアカデミーは、失敗が楽しくなるような試行錯誤がどんどんできるような子どもに成長していただきたいという思いから、立ち上げられました。
わたしは元々、栄光サイエンスラボで授業を担当していました。
授業の中で実験をする上でPDCAサイクルを回すことがとても重要です。しかし、科学実験に失敗は付きもので、失敗したあとから巻き戻すことはどうしてもできません。ある程度、一斉に授業を進めていくカリキュラムで、時間もキットも限られていますので、同じ実験をその生徒だけ何度も繰り返すこともできません。失敗する前に戻って、試行錯誤して、課題を解決できる経験を子どもたちにさせてあげることはできないかと考えました。
そこで失敗してからも繰り返し試行錯誤できるプログラミングを学べるロボットアカデミーをつくることになりました。
ーー失敗から学んでほしいという思いからどちらも生まれたのですね。栄光サイエンスラボと栄光ロボットアカデミーではどのような社会を目指していますか?
大島:どちらもひとつの「STEM事業」で運営しています。
STEM教育を通して、未来について考えられる力を持ち、社会の変化や革新、発展に影響を与えられる、また、貢献できるような子どもたちを育てたいというビジョンがあります。
社会の荒波や、先行きが見えない未来に向けて子どもたちが自分の判断軸やものさしを私たちの授業を通して培って欲しいという方針のもと、授業をしています。
*Science,Technology,Engineering,Art,Mathematics等の各教科での学習を実社会での課題解決に生かしていくための教科横断的な教育
ーー日本のSTEM教育の現状をどのように捉えていますか?
富田:STEM教育を掲げている企業もたくさんいらっしゃいますが、問題点としてそれを社会や未来にどのようにつなげるかの部分の実績がどうしてもまだ見えにくいです。
細かな部分では結果が出ていると思うのですが、可視化しにくいのが正直なところです。それこそ、テストがあるわけではないので「見える化」することも必要だと感じています。
自分も未来を変えることができる。SDGsは意識づけ。
ーー技術や科学をSDGs達成のために使う重要性をどのように考えていますか?
富田:授業の中で、目の前でやっていることが直接SDGsにつながるわけではないのですが、間接的でもSDGsとのつながりを意識しながら行動することが重要だと考えています。
学びを通して自分が未来をどう変えられるのかを考えるきっかけとしてSDGsの意識付けが必要だと感じています。これによって自分が未来を変えられるんだという実感をしてもらいたいと考えています。
大島:STEM教育の一番の長所は、実体験ができるところだと思っています。いわゆる机上の空論やただの想像だけではなく、成功と失敗のどちらも含めて体験することによって大きく成長できると思います。
SDGs達成の目標年である2030年までの間で実体験重視型、体験型重視型の教育は子どもたちに必要なものだと感じています。
ーー体験型の教育を重視しているんですね。それによって日常の学習意欲の高まりなども感じられますか?
大島:子どもたちが世の中のことに興味を示し始めていると感じています。
例えば、天候や水質などの環境系の実験をすると、食卓で子どもたちがニュースを進んで見るようになったり、「新聞の見出しを理解できている」という声が保護者の方から出てきてます。
栄光サイエンスラボや栄光ロボットアカデミーの経験を通して、子どもたちと世の中との距離感が近づいてるのかなと思ってます。
ーー栄光サイエンスラボでは具体的にどのような授業を行っていますか?
大島:栄光サイエンスラボは科学実験教室であり、SDGsを教えることがメインの目的ではないという部分はぶれないようにしています。
最初に座学からスタートしていき、実験をし、その実験結果をまとめていきます。その実験結果のまとめからさまざまな考察やアイデア、未来の展望、または自分の意見などを最後に発表して、全部で90分の授業を行っています。小学1年生でも全く集中力を切らさずに実験や記録をしているのが特徴です。
その後、「自分は何を考えたのか」の考察ををしていくのですが、最終的に、自分たちに身近な環境や食べ物、健康、エネルギーなどに関わることを自覚できます。自然と子どもたちは「これ、SDGsのこれだよね」とか「あ、これ知ってる」とか自分事にしていけるように感じています。
ーー次に栄光ロボットアカデミーについても詳しく教えてください。
富田:ほとんどの生徒にロボットとプログラミングの基礎を学んでもらいます。現在では幼稚園の年中の代から通うことができます。
学びの本当の姿は、課題を認識し、その課題をどう解決するか、自分でアイデア出しをして行くことだと思います。ロボットを作る、プログラミングを作る作業は、この学びに直結するので、教育のあるべき姿であると思います。自主性が学べるコースとなっています。
生徒たちは意見交換も交えて色々なアイデアを収集し、自分で具現化します。こんなロボットを作ったら役に立つのではないかと想像力を膨らませて考えてくれます。
1回90分の授業なのですが、短時間では解決できないので、2~3カ月の時間をかけて、ロボットやプログラミングに取り組みます。最後は一人ずつプレゼンテーションをして、アウトプットする機会を設けています。
ーーSDGsの重要性をどのように感じていますか?また、今後どのように関わっていきたいですか?
大島:まず、我々の事業のベースは子どもの教育なので、SDGsの目標4でも掲げられた「質の高い教育」を提供していきます。科学実験教室を通して子どもたちが夢や目標が明確になるような実体験を行うことが今後のビジョンになっています。
SDGsや科学実験教室というのは子どもたちのきっかけやツールでしかないと思っています。これらをきっかけに課題意識、将来意識を持ってもらうことが我々の使命だと思っています。
短期間で成長をさせることよりも、10年後、あのときSDGsや栄光に関わっていてよかったなと言ってもらえることがゴールだと考えています。富田:SDGsをカリキュラムに入れることによって「当たり前だったことがそうではない」と子どもたちがわかるようになってきたことは大きな成果だと感じています。
例えば、6番の「安全な水とトイレを世界中に」という目標ですが、きれいな水の存在は、日本人からしたら当たり前のように思えますが、実は安全な水は、山から下った水が浄水場を巡り、数多くの処理をしてこそ、飲めるようになっています。
SDGsの視点を通じて知らなかったことをちゃんと知るきっかけになっています。その技術も実は簡単なものではなく、このような当たり前をしっかりと見直さなければならないという意識付けができました。そして、「今学んでいることを未来にどう変換させることができるのか」を考えるきっかけになりました。
解決できていない問題はたくさんありますから、それを変えられる無限の可能性は皆さんのアイデアから生まれ、そのアイデアを実現させてほしいというのが我々の思いです。今後もそういったところをサポートしていければなと考えております。
おわりに
社会の変化とともに常に進化を求められる教育業界。しかし、その本質はいつの時代も変わらない、子どもたちの可能性を広げたいという思いが根底にあることを実感した取材だった。
今の子どもたちが大人になる頃にはSDGsは当たり前の世界かもしれない。そんな世界を実現するために、わたしたちも意識を変えなければならない。
これからさらに進化を続ける栄光の教育に期待をしていきたい。