【更新日:2021年9月11日 by 森あゆみ】
多くの人が耳にしたことがある「パートナーシップ」という言葉。SDGsでも17番目の目標としてパートナーシップが掲げられ、多くの人がパートナーシップの重要性は理解しているのではないでしょうか。
しかし、パートナーシップを説明するとなると何をすればいいのかを明確に説明できる人は多くないでしょう。
SDGsの17の目標の中でも目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は他16の目標とは少し枠組みが異なります。
今回はそんな目標17に大きく関わる「パートナーシップ」についての具体例をグローバル・国内外・国内の規模別のパートナーシップについて紹介します。
SDGsにおけるパートナーシップの重要性
SDGsにパートナーシップが必要な3つの理由
①SDGsは政府だけでなく、企業、個人の協力が不可欠
SDGsは国連や各国政府だけが取り組む目標ではありません。企業やNPO,NGOなどの団体、個人も含めて、あらゆる人が同じ方向に向かって課題を解決するために採決されました。
だからこそ、あらゆる立場の人々が協力し合うパートナーシップが重要です。パートナーシップを組み、同じ課題に向かって協力することで、より効率的に解決できるかもしれません。
これからは、企業や個人の枠を超えたパートナーシップが重要です。
②SDGsは開発途上国だけではなく、先進国も含めた世界規模の枠組み
SDGsの前身となるMDGsは開発途上国向けの開発目標でした。
そのため、先進国が開発途上国を支援するというニュアンスが強く、パートナーシップは重要ながらも限定的なものでした。
しかし、SDGsでは開発途上国のみならず、先進国を含めた全ての国を対象とした目標となっています。
そのためこのSDGsにおけるパートナーシップではさまざまな立場にいる国同士でパートナーシップを結び、SDGs達成のために、世界規模で取り組んでいく必要があります。
③ビジネスではないからこそパートナーシップが重要
損得関係で結ばれるようなビジネスにおけるパートナーシップとは違い、SDGsにおけるパートナーシップはこれからの世界や社会がよりよい方向へ向かっていくために結ぶものです。
もちろんSDGsを達成するためには、ビジネスに取り込み、その規模を拡大していく手法も重要です。
しかし、利益至上主義になるのではなく、SDGsで掲げられた課題に目を向け、先進国や開発途上国間のパートナーシップや、企業や団体同士のパートナーシップなどを結ぶことは非常に意義のあるものなのです。
グローバル規模のパートナーシップ 2選
グローバル規模で築いているパートナーシップを2選紹介します。
政府開発援助(ODA)
政府開発援助(ODA)とは、先進国の政府などが、開発途上国の経済や社会の発展、福祉の向上に役立つために資金・技術を提供することを指します。
具体的な活動内容としては、イエメンやオマーンの海賊対策やアジア諸国を初めとするさまざまな感染症対策への支援を行っています。
実は目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」のターゲット(指標)の1つに、先進国は政府開発援助を国民総所得の0.7%にするなどのODAに関するものがあります。
世界規模で見ると、2019年時点でのODAは1,474億ドルとなっており、またアフリカや後発開発途上国への援助は2018年から増加していると国連は発表しています。
また2019年の日本のODA実績贈与相当額はアメリカ、ドイツ、イギリスに次ぐ世界4位となっており、2015年以降5年連続で第4位です。
このように各国の政府が主導となってパートナーシップを築いているのです。
参考:https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/17goals/17-partnerships/
参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_008417.html
参考:https://unstats.un.org/sdgs/report/2020/goal-17/
参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/about/oda/oda.html
南南協力
南南協力とは、ある分野で開発の進んでいる国が別の途上国の開発を支援することを言います。
SDGの目標17のターゲットには、「全ての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する。」と記されています。
このような支援方法と言えば、先ほど紹介したODAのように、先進国から開発途上国への支援を想像することが多いですが、途上国から途上国への支援も行われています。それが南南協力です。
南南協力に取り組むことによって、いくつかのメリットもあります。
例えば近隣にある途上国同士では、一般的に言語や文化、気候などが似ていることが多いという理由から、技術の移転が円滑に行われます。
また、先進国が開発途上国への直接援助に対し、途上国からの直接援助の方が経費を低く抑えることができるという利点もあります。
援助する側になった途上国は、自国の発展に対して大きな自信を得ることにもつながります。
このように先進国から途上国への支援だけではなく、開発途上国という立場同士でのパートナーシップも築かれています。
参考:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hakusyo/11_hakusho/keyword/keyword01.html
参考:https://www.jica.go.jp/activities/issues/ssc/index.html
日本企業から世界に広がるパートナーシップ 3選
続いては日本企業から世界に広がるパートナーシップを紹介します。
ヤマハ株式会社 インドにおける器楽教室
ヤマハ株式会社(以下、ヤマハ)では、金銭面や技術面での支援ばかりでなく、音楽という娯楽を通して、新興国を文化的な面からもバックアップするようなパートナーシップ活動を行っています。
ヤマハはサステナビリティの一環として、2008年に現地法人「ヤマハ・ミュージック・インディア」を設立し、SDGsの達成に向けさまざまな活動を行っています。
2019年にインド初の生産工場を稼働し、その工場で作られたアコースティックギターやPA機器などをはインド国内市場をはじめ新興国市場で販売しています。
また2015年より「スクールプロジェクト」という楽器に触れる機会に恵まれなかった子どもたちに、演奏する楽しさを知ってもらえるよう支援する取り組みを、新興国を中心に展開しています。
さらに、日本の義務教育でも多く取り入れられているリコーダーを軸に楽器にふれあってもらう「Music Time」という活動にも取り組んでいます。
このように日本の企業であるヤマハとインドでは「音楽」を通じてパートナーシップが結ばれています。
(参考:https://www.yamaha.com/ja/csr/feature/feature_10/ )
UCCホールディングス株式会社 コーヒー生産国とのパートナーシップ
UCCホールディングス株式会社(以下、UCCグループ)は、さまざまなコーヒー生産地とコーヒーを通じてパートナーシップを結んでいます。
1981年、日本のコーヒー業界では初めて、ジャマイカで「UCCブルーマウンテン直営農園」を開設し、直営農園経営を開始しました。
この直営農園は2008年の認証取得からこれまで、環境保全や労働環境の整備などを行い全面的に支援しています。
また、幻のコーヒー「ブルボンポワントゥ」を復活させるために、生産地であるレユニオン島とフランス国立農業研究開発協力センターのサポートを受け、再生プロジェクトを開始しました。
その幻のコーヒーは、今ではレユニオン島のお土産やホテル、レストランで消費され、一般の旅行者への農園見学やコーヒー試飲なども行えるようになりました。
また、地元のレストランでも料理に使われるなど、地域活性化にもつながっています。
UCCグループは「カップから農園までの持続可能な活動で、コーヒー産業の発展に貢献し、世界を笑顔にする」というサステナブルビジョンを通して、生産だけでなく、開発や消費に対するアプローチも行っています。
このようにコーヒーを通じて日本企業と海外でもパートナーシップが結ばれています。
株式会社成城石井 table for twoにおけるパートナーシップ
株式会社成城石井(以下、成城石井)は、食材の販売を通じてグローバルにパートナーシップを築き、SDGsの達成に貢献していいます。
成城石井は、「世界中の社会が抱える課題の解決なくして、成城石井の持続的な成長を実現することはできない」という考えの下、SDGsの達成に貢献していくと公表してます。
その貢献活動の1つが”table for two”への参加です。
“table for two”は世界規模で起きている「飢餓による栄養失調」と「飽食による肥満・生活習慣病」という食の不均衡を解消し、 開発途上国と先進国双方の人々の健康を同時に改善することをミッションとする活動です。
成城石井が運営するワインバー「Le Bar a Vin 52 AZABU TOKYO」にて、table for twoが設定する「ヘルシーメニューガイドライン」に該当するメニュー1食につき20円の寄付を実施しています。
また「ロカボ」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか?
ロカボというのは、簡単に言うと緩やかに糖質摂取を管理する食事法のことです。
具体的には、1食で摂取する糖質量を20-40g、デザートは10g以下、1日70-130gに抑えるという、糖質制限です。
成城石井ではこの「ロカボ」を謳っている生ハムを注文した客に、1食につき20円を預かり、table for twoの活動の支援に活用しています。
このように食を通じてパートナーシップを結んでいます。
参考:http://www.seijoishii.co.jp/csr/
参考:https://jp.tablefor2.org/about/
参考:https://locabo.net/about/
日本国内のパートナーシップ 3選
続いては、国内のパートナーシップを紹介します。
雪印メグミルク株式会社 地域社会とのパートナーシップ
ナチュレ恵シリーズなどでおなじみの雪印メグミルク株式会社(以下、雪印メグミルクグループ)では、社会への影響度とグループ事業への影響度が高い社会課題を抽出し、5つのCSR重要課題を設定しています。
CSR重要課題の1つに「地域社会への貢献」を設定しています。
「地域と連携し、社会課題解決に貢献する」というKPI(重要管理指標)を軸に、2019年度には茨城県と連携し、日本人に不足がちである野菜とカルシウムを摂取できる、茨城県産野菜と乳製品を使ったレシピを県庁食堂やスーパーなどで展開しました。
他にも2012年には、札幌市と「健やかな子どもの成長のためのまちづくり」を中心に、幅広い分野におけるまちづくりに取り組んでいくことを柱とした協定を締結しました。
このように多くの地域とパートナーシップを結ぶことで多方面からのSDGsへのアプローチをしています。
参考:https://www.meg-snow.com/csr/policy/
参考:https://www.meg-snow.com/csr/link/#02
株式会社みずほフィナンシャルグループ銀行 ステークホルダーとのパートナーシップ
株式会社みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほフィナンシャルグループ)ではSDGs達成に向けて、推進体制の強化やセミナーを開催し、グループ各社の専門機能を発揮してグループ一体となって取り組んでいます。
特に、パートナーシップにおいては「ステークホルダー」と「SDGsカンファレンスへの参加」の2つを軸に取り組んでいます。
当グループでは、顧客、株主、社員、地域社会、仕入先・競争会社、政治、行政にステークホルダーを分類し、これらのステークホルダーとコミュニケーションを密にとることでのパートナーシップを掲げています。
顧客には「お客さま満足度調査」などによる意見調査、株主には公平かつ適時・適切な情報開示、地域社会にはボランティア活動など、さまざまな形態で各ステークホルダーとのコミュニケーションによるパートナーシップを築いています。
また2019年にはみずほ銀行と産業技術総合研究所の共催で、SDGsをテーマにしたセミナー「”協創力”が生む新たな企業価値」を開催しました。
このように、企業との利害関係者や公的研究機関とのパートナーシップを結んでいる例もあります。
参考:https://www.mizuho-fg.co.jp/csr/mizuhocsr/management/sdgs/index.html#conference
参考:https://www.mizuho-fg.co.jp/csr/communication/mizuho/index.html
ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社 沖縄とのパートナーシップ
ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社(以下、ポッカサッポロ)の子会社である、株式会社沖縄ポッカコーポレーションでは、さんぴん茶を初めとする”沖縄県限定商品”を数多く販売しています。
実は1993年に日本で初めて缶入りさんぴん茶を開発したのは沖縄ポッカなのです。
その他にも2003年にはプロゴルファーの宮里三兄妹の出身地でもある東村と共同で、ミネラルウォーター「東村の天然水」を商品化しました。
この商品の収益の一部は、東村を通じ、国指定天然記念物「慶佐次湾(げさしわん)のヒルギ林」の環境保全活動に役立てています。
また、Bリーグに所属のプロバスケットチーム「琉球ゴールデンキングス」を応援するなど、地域密着型の企業として、沖縄県とのパートナーシップを育んでいます。
参考:https://www.pokkasapporo-fb.jp/okinawa/#box9
参考:https://www.pokkasapporo-fb.jp/okinawa/sanpincha/history_1.html
参考:https://www.pokkasapporo-fb.jp/products/water/water/JB26.html
まとめ
今回はSDGsにおけるパートナーシップについて、7つの実際の事業例とともに紹介しました。
SDGsにおけるパートナーシップでは、さまざまな立場にいる人たちが、各々の考え方や知識を用いて、「持続可能な社会を目指す」という1つの目標に向かって協力していくことが大切です。
そうすることで世界全体を巻き込んだSDGsへの取り組みが完成すると思います。
今後ますます多くの国や団体・企業などがさまざまなパートナーシップを結び、今以上に世界全体を巻き込んで活動していくかが、SDGs目標を達成するカギになります。
皆さんも是非、世の中にあるさまざまなパートナーシップに目を配ってみてください。
SDGs CONNECTライター。マーケティングに興味があります。十人十色の社会を目指して、多様な情報・価値観を発信していきます。好きなキャラは綾波レイ。