《徹底解説》SDGコンパスとは|概要からSDGsとの関係性までわかりやすく解説

#ESG#持続可能#環境#経営 2021.09.03

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【更新日:2021年9月14日 by おざけん

近年、SDGsの注目が高まっています。各種メディアがSDGsの視点で積極的に発信する他、街中でもSDGsのロゴを見かける機会が増えてきました。

あわせて多くの企業が、SDGsに取り組みはじめ、事例も多く生まれてきています。しかし、いざSDGsに取り組み始めようとしても、どのように取り組みを進めていけばいいのかがわからない人も少なくないでしょう。

そこで、この記事では、SDGs導入のガイドラインとも言える「SDGコンパス」の内容を紹介し、SDGsに取り組むステップについてわかりやすく解説していきます。

SDGコンパスとは

SDGコンパスは、SDGsを導入する企業の導入指針として作成されました。作成したのは、国際的に活動するNGOのGRIと、国連グローバル・コンパクトなどの組織で、GCNJ(グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン)とIGES(公益財団法人地球環境戦略研究機関)が日本語への翻訳を担当しました。

SDGコンパスは以下のURLより無料でダウンロードでき、誰でも閲覧できるようになっています。

SDGコンパス

SDGコンパスは、企業がSDGsに最大限に貢献できるように5つのステップを示す全30ページに渡る資料です。SDGコンパスは、大企業だけに当てはまるものではありません。中小企業やその他の組織も、SDGsに取り組む基礎として、必要に応じて活用することで、SDGsの取り組みを柔軟に開始することができます。

SDGコンパスで示された5つのステップは以下です。

  1. SDGsを理解する
  2. 優先課題を決定する
  3. 目標を設定する
  4. 経営へ統合する
  5. 報告とコミュニケーションを行う

次の章からは、SDGコンパスで示された5つのステップについて詳しく解説していきます。

SDGコンパスよりSDGs CONNECT編集部が抜粋

SDGコンパスで掲げられた5つのステップ

ステップ1|SDGsを理解する

SDGsに取り組む上で、まず重要なのはSDGsについて十分に理解することです。SDGsとは何なのかだけではなく、どのように策定されたのか、どのようにすれば企業がSDGsを活用できるのかなどを理解することで、ステップ2以降の活用場面で役立ちます。

SDGs CONNECTでも、SDGsの基礎について解説した記事を公開しています。

SDGコンパスでは、以下の3つのテーマでSDGsを理解するためのコンテンツが展開されています。

  • SDGsとは何か
  • 企業がSDGsを利用する理論的根拠
  • 企業の基本的責任

上記のどれも、企業がなぜSDGsに取り組むべきなのかを理解するために必要なコンテンツです。SDGs CONNECTの記事と合わせて読むことで、より具体的にSDGsに取り組むことができるようになるでしょう。

ステップ2|優先課題を決定する

企業にとって、17あるSDGsの目標は等しく重要であるわけではありません。各企業の事業や戦略によって各目標に対して貢献できる程度や付随するリスクは異なります。

ステップ2では企業に及ぼす可能性のある「正の影響」と「負の影響」を把握し、それらの影響に関連する特定の分野を明確にし、優先課題を決定していきます。

優先課題は以下3つの大まかな項目に沿って決定されます。

①バリューチェーンをマッピングし、影響領域を特定する
②指標を選択し、データを収集する
③優先課題を決定する

バリューチェーンとは、事業活動を機能ごとに分類し、どの部分(機能)で付加価値が生み出されているか、競合と比較してどの部分に強み・弱みがあるかを分析し、事業戦略の有効性や改善の方向を探ることです。

【参考】バリューチェーンとは・意味|創造と変革のMBA グロービス経営大学院

具体例としては供給拠点、調達物流、生産、販売、製品の使用、廃棄というような項目をバ
リューチェーン上の機能として指します。

つまりこの項目をわかりやすく言うと「事業における各機能の強み・弱みをSDGsの観点から分析し、その企業・事業に関連深いSDGsの目標を特定する」ということです。

事業の多くは基本的に一機能を担う企業が集うことで実施されます。一機能を担う企業が自社の活動範囲を超えて、事業全体のバリューチェーンの観点からSDGsを考慮することにより、最大の事業機会の発見に繋がる可能性があります。結果的に最大の効果が期待できる領域を高いレベルで俯瞰することが出来ます。

現在の影響と将来考えられる影響の両方にしかるべき配慮をする必要がある。

この項目における具体的な影響領域の特定基準は以下2点です。

①1つ以上のSDGsの実施に現在貢献しているか、貢献する可能性のある各企業の中核的能力(コア・コンピテンシー)、技術および製品構成
②バリューチェーン全体に直接または間接に関わり、一つ以上の SDGs の目標に、現在、負の影響を与えているか与える可能性のある各企業の活動

SDGコンパスよりSDGs CONNECT編集部が抜粋

各企業は、影響が大きい領域をマッピングすることにより、どこにSDGs実施のための取組みを集中させるべきかを知ることができます。そこで次の項目では大きな影響が期待できる領域について、企業の活動とそれが持続可能な開発に与える影響の関係を最も適切に表す 1 つ以上の指標を設定し、データを収集していきます。

実際にSDGコンパスのウェブサイトでは、17のSDGsの目標およびそのターゲットに対してマッピングした事業指標を一覧にしています。企業はその指標をヒントに独自で指標を設定することができます。

SDGコンパスよりSDGs CONNECT編集部が抜粋

ステップ3|目標を設定する

ステップ2で決定した優先事項に基づいて目標を設定することが本ステップです。

目標の設定は、企業におけるSDGsの達成度を高める上で非常に重大であり不可欠です。

目標設定に関するステップは以下の 4つの項目で構成されます。

①目標範囲を設定し、KPI(主要業績評価指標)を選択する
②ベースラインを設定し、 目標タイプを選択する
③意欲度を設定する
④SDGsへのコミットメントを公表する

①のKPIとは主要業績評価指標のことであり、業績管理評価のための重要な指標です。KPIを正しく設定することは、組織の目標を達成する上で必要不可欠です。
【参考】KPI(重要業績評価指標) | 用語解説 | 野村総合研究所(NRI)

ステップ2で決定した各優先課題に関連するような主要指標をいくつか絞るといいでしょう。

②のベースライン、目標タイプは以下の通りです。

【ベースライン】

特定の時点
ex)女性役員の数を2013年末のベースラインと比較して2020年末までに40%増加させる
特定の期間
ex)2018年から2020年までの3年間の平均水使用量を、2006年から2008年までの平均水使用量と比較して、50%削減する

ベースラインは「選択の仕方」と「選択の理由」について透明性を確保するべきです。
またそれに伴い報告情報の一貫性や妥当性を左右する合併、買収、撤退などの出来事があった場合は、ベースラインを算定し直す必要があります。

【目標タイプ】

絶対目標 名称 相対目標
社会に対して及ぼすと期待される影響を表すのに最適 メリット 産出単位当たりの達成度の測定における正確性に優れている
企業の成長(または衰退)を考慮していない デメリット 目標が与える影響については把握しきれない
安全衛生事象の発生率を2015年から2020年までに30%削減する 具体例 企業の単位売上高に対するスコープ1の温室効果ガス排出量を2014年から2018年までに25%削減する

どちらの目標でも、完全な全体像はつかめないため、各企業が目指す影響をきちんと説明することが推奨されています。

③では意欲度の設定について触れられています。意欲的な目標を決定することで宣伝効果や、業界のリーディング企業が同業者に働きかける効果を生みます。結果として同業他社もその目標に倣わざるを得なくなり、さもなければ、業界から取り残されることになるのです。

そして意欲的な目標設定のアプローチ法として「インサイド・アウト・アプローチ」「アウトサイド・イン・アプローチ」が紹介されています。

簡単に言うと、インサイド・アウト・アプローチは過去のデータ、現在の潮流、同業他社の目標に基づいて、事業の目標を決める内部的な目標設定の方法を指し、このアプローチ法ではSDGsを初めとする世界的な課題・ニーズに答えられないとされています。

一方アウトサイド・イン・アプローチは社会的・世界的なニーズに基づいて事業目標を設定し、現状の達成度と求められる達成度のギャップを埋めていく外部的な目標設定の方法を指し、持続可能性における企業のリーダーシップを規定していく1つの要因となるとされています。

SDGコンパスよりSDGs CONNECT編集部が抜粋

④では各企業が目標を公表することの重要性を述べています。

従業員や取引先がやる気になって取り組むことはもちろん、外部のステークホルダーとの建設的な対話の基盤にもなります。

また目標を公表することで、期限内に達成できずに批判されるリスクを回避すべく、取組の内容、達成状況、課題などの情報発信を定期的に実施し、透明性を確保することができます。

ステップ4|経営へ統合する

ステップ3で目標を設定したあとは、経営に統合し、SDGsへの取り組みを開始します。SDGコンパスでは、以下の3点が紹介されています。

①持続可能な目標を企業に定着させる
②全ての部門に持続可能性を組み込む
③パートナーシップに取り組む

①においては、次に示す2つの原則が特に重要です。

特に事業として取り組む根拠を明確に伝え、持続可能な目標に向けた進展が企業価値を創造すること、またそれが他の事業目標に向けた進展を補完することについて、共通の理解を醸成すること
部門や個人が当該目標の達成において果たす具体的な役割を反映した特別報償を設けるなど、持続可能な目標を全社的な達成度の審査や報酬体系に組み込むこと

また持続可能な目標を企業に定着させるには、特に経営トップの主導が特に重要となります。大幅な組織改革を成功させるには、その改革の種類を問わず、経営幹部による積極的なリーダーシップが鍵となります。

②ではSDGsに基づく持続可能性を事業戦略や企業風土、事業展開に組み込み、研究開発部、事業展開部、供給管理部、事業部、人事部等の各部門の支持と主体的な取組みが鍵を握っています。

SDGコンパスよりSDGs CONNECT編集部が抜粋

③では企業がSDGsに取り組むにあたり、パートナーシップ構築の重要性を説いています。

基本的に、企業は少なくとも次に示す3つのタイプのパートナーシップを検討することが好ましいとされています。

バリューチェーン・パートナーシップ:バリューチェーン内の企業が相互補完的な技能・技術・資源を組み合わせて市場に新しいソリューションを提供
セクター別イニシアチブ:業界全体の基準・慣行の引き上げと共通の課題の克服に向けた取組みにおいて、業界のリーダーが協力
多様なステークホルダーによるパートナーシップ:行政、民間企業および市民社会組織が力を合わせて複合的な課題に対処

パートナーは、共通の目標の設定、明確なガバナンス体制の整備、今後の資源需要の予測などを目指す必要があります。

ステップ5|報告とコミュニケーションを行う

SDGsへの取り組みは取り組んで終わりではありません。自社がどのように社会に対して貢献しているのかを企業の外部に示し、継続したコミュニケーションをとっていく必要があります。

例えば、金融市場においては、ESG投資の機運が高まっています。企業がE(環境)S(社会)G(ガバナンス)の3つの視点で情報を開示することで、その企業の長期的な成長性が評価され、投資に繋がり、企業の価値向上に繋がります。このESGの視点は、SDGsの17の目標との関連性も深く、多くの企業はESGとSDGsを複合的に合わせた視点で取り組みを開示しています。

その他にも、自社の顧客にSDGsに取り組んでいることをアピールすることで、自社のロイヤリティを高めることに繋がる他、従業員の企業への帰属意識も高まります。

SDGコンパスでは、企業がSDGsに関する事項を、多くのステークホルダーとの意見交換や報告に導入していくことを勧めています。SDGsへの取り組みは積極的に報告し、コミュニケーションを行うことで、自社の価値向上に繋がります。

SDGコンパスでは、主に以下の2点について解説されています。

①効果的な報告とコミュニケーションを行う
②SDGs 達成度についてコミュニケーションを行う

SDGコンパスよりSDGs CONNECT編集部が抜粋

実際、企業の持続可能性に関する情報開示はここ10年の間、ステークホルダーによる情報要求とともに劇的に増加しています。各企業が企業のステークホルダーのニーズを把握し、SDGsに関する進捗状況を定期的に報告し、コミュニケーションを行うことが重要です。

また、SDGsでは、取り組んだ結果を報告することをターゲットに含んでいます。SDGsのターゲット 12.6では各国政府に対し、「特に大企業や多国籍企業などに対し、持続可能な取組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励すること」と定められています。

企業がSDGsに取り組むメリット

帝国データバンクの調査によると、実際にSDGsに取り組む企業は約24%しかいないとされています。しかし、SDGsへの取り組みは企業にとって大きなメリットをもたらします。

企業がSDGsに取り組むメリットは主に以下です。

  • 企業価値の上昇
  • ビジネスチャンスにつながる
  • 採用力の強化

特にこの中でもSDGsへの取り組みをビジネスチャンスに変えていくことが重要です。今まで国内では、SDGsに類似した概念としてCSRが存在していました。ビジネスとしてではなく、企業が事業の外でボランティアとして社会貢献に取り組むことで、社会からのイメージアップを狙った取り組みです。

一方で、事業の外でSDGsに取り組むと、その企業のビジネスが不況になると、その取組が途絶えてしまいます。

そこでSDGsをビジネスチャンスと捉え、事業を通じてSDGsに取り組むことで、収益を得ながら継続して社会課題を解決することが可能です。

SDGsに取り組む際には、単なる社会貢献ではなく、事業を通じてどんな価値を提供できるのかを振り返り、事業そのものを見つめ直すことも重要です。

企業がSDGsに取り組むメリットは以下の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。

企業のSDGs取り組み事例

国内では多くの企業がSDGsに取り組み始めています。

SDGコンパスの内容を理解した上で、一つひとつの事例を知ることで、より具体的に、SDGsの推進方法を掴むことができます。また、同じ分野の企業がどのような取り組みを行っているのかを知ることも、重要です。

以下の記事では、SDGsの取り組み事例を51個に渡って紹介しています。参考にご覧ください。

また、外務省は優れたSDGsの取り組みを表彰する「ジャパンSDGsアワード」を毎年開催しています。どのような取り組みを行っている企業が受賞しているのか、過去の受賞企業の取り組みを含めて以下の記事で紹介しています。

SDGsとは

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。

2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。

SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。

SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。

▼各目標の詳細は以下の画像をクリック

▼SDGsについて詳しくはこちら

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