【更新日:2021年9月17日 by 森あゆみ】
昨年四月、私の大学ではコロナ禍の中アルバイトができない学生に向けてフードバンクの利用についてのメールが来ました。
私はフードバンクについて知らなかったのですが、調べてみると食料不足の人に支援を行うといった画期的な施設で、感動したことが昨日のことのように思い出されます。
今回はそんなフードバンクとSDGsの関係に迫っていきたいと思います。
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SDGsとは
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
▼各目標の詳細は以下の画像をクリック
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フードバンクとは
フードバンクの役割
フードバンクの取り組みとしてその名の通り「食料」の「銀行」です。
具体的には、「食べ物が余っている人」と「食べ物が足りなくて困っている人」をつなぐ仲介者をしています。ここでは余っている食べ物を持っている人が支援者、食べ物をもらう人が利用者となります。
また、ただ横流しにするのではなく必要なものを必要なだけ必要としている人に届けます。
フードバンクで扱われる食料とは?
フードバンクでは、加工食品の場合だと賞味期限が1ヶ月以内のものを受け付けることが多くなっています。
全てのものを取り扱えるわけではなく、相手とマッチングしてから配送するまでの時間に耐えられるように賞味期限が長いものが好まれる傾向にあります。
具体的には、米やパンなどの穀物や生鮮食品が挙げられます。お弁当や食べ残しといった消費期限までが短い食料は受け付けていないことが多いので注意が必要です。
フードバンクを使うメリット
利用者視点でのメリット
フードバンクの利用者のメリットは、食費の節約はもちろんのこと食に関する喜びが増えることが挙げられます。
金銭の問題で、バランスの良い食事が取れない利用者が多いためフードバンクのお陰で食事を楽しむことができます。
支援者として
支援者の最大のメリットは食品ロスを減らすことができることです。食品ロスは廃棄費用がかかるためコスト削減にもつながります。
支援者を企業と行政に分けた時、企業にとってフードバンクへの支援は社会貢献活動の一環になり、行政にとっては市民の食料問題の解決につながるという意味で地域活性化につながります。
-フードバンクとSDGsとの関係
フードバンクはフードロス問題と深い関わりがあり、SDGsの達成にも貢献する取り組みです。
世界では13億トンもの食料が廃棄されています。特に開発途上国でインフラの未整備で食料の保存ができず、多くが食べられずに廃棄されてしまっているケースもあります。
これにより、子供や社会的に脆弱な立場にある人たちは、重い栄養失調や、食料不足による免疫低下で感染症のリスクが高まるなどさまざまな深刻な問題に直面しています。
また、日本のフードロスは年間646万トンにも登ります。主に家庭からの食料廃棄が多く、可食部の野菜の廃棄や食べ残しが原因です。世界でも13億トンもの食料が廃棄されています。
そこで一役買っているのがフードバンクです。まだ消費できるのに廃棄される食品を回収し、食料不足に悩んでいる人々へ届ける活動は、世界のフードロスを解決するための一つの有効な手段と言えます。
フードロスは主にSDGs1「貧困をなくそう」2「飢餓をゼロに」12「つくる責任・つかう責任」と関わりがあります。
▼フードロスについて詳しくはこちら
世界のフードバンクの取り組み
世界中で、フードバンクの取り組みは広がっています。日本に比べて大きくフードバンクを展開している国もあり、諸外国を参考に日本でもさらなるフードバンクの取り組みが広がるように取り組む必要があります。
Global Food Banking Network (アメリカ)
そもそも、アメリカはフードバンク大国の1つです。
シカゴに拠点を置くGFNは、毎年世界中のフードバンク団体やフードバンク準備委員会を招待し、1週間の研修を提供しています。
研修では、フードバンクの最新情勢を学ぶだけではなく参加者たちの状況や成功例をシェアする機会が設けられています。世界中の代表とディスカッションする時間があるのも特徴です。
ソーシャルマーケット(トルコ)
また、トルコには村長が立ち上げたソーシャルマーケットという団体があります。
この団体では食料支援が必要な家庭のみが登録し赤いカードを渡されるという画期的な制度を導入しています。このようなフードバンクにおけるメンバーシップ制度は前例がなく、世界中のフードバンクが注目しています。
そんなトルコでは、「フードバンク」の定義が法律上で明記され、寄付者は税金控除も受けることができるようになっています。
(参考)http://2hj.org/activity/report/world/229.html
国内に多くのフードバンクを展開するオーストラリア
オーストラリアの場合はオーストラリア全土にフードバンクの拠点があり計2,900福祉施設を通じて、毎日70,000人以上に食料を提供しています。
各地域に根ざした支援のためにオーストラリアの各州にフードバンクがあり、全てのフードバンクは独立したNPO団体ですが、団体間で確固としたネットワークを築いています。
アメリカやトルコと違って、1つの団体ではなくオーストラリアにはフードバンクのあるべき理想の姿があります。
日本のフードバンク
日本にも多くのフードバンクがあります。2019年9月現在、日本には約100のフードバンクがあります。1年あたりに創設される数も増えており、全ての都道府県に1つは施設があります。
フードバンクは主にNPO法人によって運営されています。農林水産省の調べによると全体の52%がNPOによる運営であり、他には公共施設や地方自治体によって運営されています。
しかし、経営面でいうと、半分の団体で有給のスタッフが0人という統計が出ていて、まだまだボランティアの方で構成されている団体が多いことがわかります。
フードバンクの取り組みを日本に広めていくには参加してみることが大切です。そこで、日本で代表的なフードバンクについて紹介します。
セカンドハーベスト
セカンドハーベストのコンセプトは「すべての人に、食べ物を。」「もったいない」を「ありがとうへ」です。セカンドハーベストは、日本で初めてのフードバンクとして日本でのフードバンクネットワークを成功させるべく活動してきました。
主な活動としては、フードバンクだけではなく炊き出し活動や政策提言活動を行なっています。東日本大震災の際には、当日の炊き出しだけではなく184回にわたって被災地に物資を届けました。
フードバンク北関東
フードバンク北関東はNPO法人三松会のフードバンク活動のことを言います。
NPO法人三松会は寺が母体となっているため、他部門では葬祭の事業などを行なっています。
群馬県内、栃木県南部、埼玉県北部を中心とした各地域の児童養護施設、障害者施設など受益する団体は280か所に上ります。
フードバンク北関東の活動で特徴的なのはフードドライブです。
家庭に眠っている食品を、会社や学校、グループなどで集めて、フードバンクに寄付をする運動のことを言います。企業の食品ロスだけでなく、家庭からも支援ができるフードバンク北関東の取り組みは、支援者にもフードロスの問題をより自分ごととして捉えてもらえる点で画期的だと言えます。
ふーどばんくOSAKA
ふーどばんくOSAKAは大阪を中心に活動している団体です。主に余剰食料回収とそれらの配送を行なっています。
他のフードバンクと異なるところは、社会貢献だけではなく受益者の食育や経費削減などの財政面に対してもアプローチしているところです。
具体的には、ふーどばんくOSAKAの公式サイトの中で食料の活用方法を紹介したり食品ロスの現状について説明しています。
最後に
フードバンクとフードロス問題をSDGsと掛け合わせて解説してきました。
私の感想としては、フードバンク産業は海外では法整備も含めて進んでいるが国内のフードバンクはまだまだ発展途上であると感じました。
1日でも早く認知が進み、日本にもフードバンクのネットワークが現れることを祈っています。