【更新日:2021年9月11日 by 森あゆみ】
SDGsは1から17まで多くの目標が設定されていますが、それらは全て繋がっています。
そしてその複雑に絡み合った課題を解決していくには国、企業、個人のパートナーシップが必要不可欠なのです。
今回はSDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」について考えていきます。
見出し
SDGsとは
SDGsは“Sustainable Development Goals”の略称です。日本語では「持続可能な開発目標」と表されます。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsは、2016年から2030年までの15年で達成すべき17のゴールと169のターゲットで構成されています。
SDGsでは経済や環境、社会の課題が幅広く取り上げられ、持続可能な社会を築き上げるために、国連が主導してさまざまな取り組みが広がっています。
SDGs CONNECTでは、SDGsの各目標ごとに解説記事を公開しています。
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目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」
目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の内容
この目標17はSDGsを実現するために、「持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する」ことを掲げています。
他の16の目標が課題の分野ごとに整理されているのに対し、目標17は課題解決の手段を提示するような内容となっており、SDGsの1~16の目標の総括として幅広い分野について触れています。
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上記7つのカテゴリー分けられ、それぞれで国と国の協力だけでなく、企業や研究者、市民団体、地域、学校、家庭、そしてわたしたち個人がSDGsの担い手であることを再確認させる内容となっています。
(参考:17.パートナーシップで目標を達成しよう | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会) (unicef.or.jp))
(参考:SDGs 17「パートナーシップで目標を達成しよう」 | なるほどSDGs (naruhodosdgs.jp))
「パートナーシップで目標を達成しよう」のターゲットと解決方法
ターゲットとは
SDGsにおけるターゲットとは、「最終的な目標」に到達するために必要となる「より具体的な達成すべき目標・成果、必要な取り組み」のことを指します。目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は19個、7つのカテゴリーに分けられています。
「1-1」のように数字で示されるものは、それぞれの項目の達成目標を示しています。
「1-a」のようにアルファベットで示されるものは、実現のための方法を示しています。
17.1 | 課税及び徴税能力の向上のため、開発途上国への国際的な支援なども通じて、国内資源の動員を強化する。 |
17.2 | 先進国は、開発途上国に対するODAをGNI比0.7%に、後発開発途上国に対するODAをGNI比0.15~0.20%にするという目標を達成するとの多くの国によるコミットメントを含むODAに係るコミットメントを完全に実施する。ODA供与国が、少なくともGNI比0.20%のODAを後発開発途上国に供与するという目標の設定を検討することを奨励する。 |
17.3 | 複数の財源から、開発途上国のための追加的資金源を動員する。 |
17.4 | 必要に応じた負債による資金調達、債務救済及び債務再編の促進を目的とした協調的な政策により、開発途上国の長期的な債務の持続可能性の実現を支援し、重債務貧困国(HIPC)の対外債務への対応により債務リスクを軽減する。 |
17.5 | 後発開発途上国のための投資促進枠組みを導入及び実施する。 |
17.6 | 科学技術イノベーション(STI)及びこれらへのアクセスに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を向上させる。また、国連レベルをはじめとする既存のメカニズム間の調整改善や、全世界的な技術促進メカニズムなどを通じて、相互に合意した条件において知識共有を進める。 |
17.7 | 開発途上国に対し、譲許的・特恵的条件などの相互に合意した有利な条件の下で、環境に配慮した技術の開発、移転、普及及び拡散を促進する。 |
17.8 | 2017年までに、後発開発途上国のための技術バンク及び科学技術イノベーション能力構築メカニズムを完全運用させ、情報通信技術(ICT)をはじめとする実現技術の利用を強化する。 |
17.9 | 全ての持続可能な開発目標を実施するための国家計画を支援するべく、南北協力、南南協力及び三角協力などを通じて、開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な支援を強化する。 |
17.10 | ドーハ・ラウンド(DDA)交渉の受諾を含むWTOの下での普遍的でルールに基づいた、差別的でない、公平な多角的貿易体制を促進する。 |
17.11 | 開発途上国による輸出を大幅に増加させ、特に2020年までに世界の輸出に占める後発開発途上国のシェアを倍増させる。 |
17.12 | 後発開発途上国からの輸入に対する特恵的な原産地規則が透明で簡略的かつ市場アクセスの円滑化に寄与するものとなるようにすることを含む世界貿易機関(WTO)の決定に矛盾しない形で、全ての後発開発途上国に対し、永続的な無税・無枠の市場アクセスを適時実施する。 |
17.13 | 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を促進する。 |
17.14 | 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する。 |
17.15 | 貧困撲滅と持続可能な開発のための政策の確立・実施にあたっては、各国の政策空間及びリーダーシップを尊重する。 |
17.16 | 全ての国々、特に開発途上国での持続可能な開発目標の達成を支援すべく、知識、専門的知見、技術及び資金源を動員、共有するマルチステークホルダー・パートナーシップによって補完しつつ、持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する。 |
17.17 | さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。 |
17.18 | 2020年までに、後発開発途上国及び小島嶼開発途上国を含む開発途上国に対する能力構築支援を強化し、所得、性別、年齢、人種、民族、居住資格、障害、地理的位置及びその他各国事情に関連する特性別の質が高く、タイムリーかつ信頼性のある非集計型データの入手可能性を向上させる。 |
17.19 | 2030年までに、持続可能な開発の進捗状況を測るGDP以外の尺度を開発する既存の取組を更に前進させ、開発途上国における統計に関する能力構築を支援する。 |
世界の現状
資金不足
UNCTAD(国連貿易開発会議)によると、発展途上国が2030年までにSDGsを達成するための資金が2兆5,000億ドル不足しているとされています。
そのため、全ての国が国内の資金を動員することが求められます。しかし、低所得国は税収基盤が弱く、徴税能力も低い傾向にあるため、難しいのが現状です。
ODA(政府開発援助)は2014年に1352億ドルとなり、これまでの最高水準に達しました。
ODAとは、発展途上国の経済発展や福祉の向上のために先進工業国の政府及び政府機関が発展途上国に対して行う援助や出資のことを指します。
ODAを増やすにも途上国の債務持続可能性を考慮することが重要で、今後資金不足の問題は大きな課題です。
(参考:IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL17.pdf)
(参考:5.世界のODAについて | ODAの基礎知識 | 国際協力・ODAについて – JICA)
デジタル・ディバイド(情報格差)
インターネットなどの情報通信技術(ICT)の利用機会や利用能力に関する格差である「デジタル・ディバイド」も大きな課題の1つです。
デジタル・ディバイドとは、パソコンやインターネット等の情報技術(IT)を利用する能力、及びアクセスする機会を持つ者と持たざる者との間に、情報格差が生じるとされる問題のことを指し、所得・年齢・都市と地方・先進国と途上国・人種や教育の違いなどで格差が発生すると言われています。
アメリカでは1990年代中盤から論議され始め、1999年7月の商務省報告書”Falling Through the Net: Defining the Digital Divide”の時点で、年収7万5000ドル以上の世帯は、最低所得層の世帯に比べインターネットにアクセスできる比率が20倍以上、パソコン所有率も9倍以上、また最高度の教育を受けた層と最低度の教育を受けた層のアクセス格差は1年間で25%上昇、と指摘されていました。
世界中でITの普及は進んでおり、アフリカでもインターネットユーザー数は過去4年間でほぼ倍増したと言われています。
世界の若者の約30%がデジタル・ネイティブであり、少なくとも5年間はオンラインで活動に触れているというデータもあります。
しかしその一方で、40億人以上の人々がインターネットを利用できておらず、その90%は発展途上国の人々という報告もあり格差があることが分かります。
(参考:IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL17.pdf)
(参考:デジタルデバイドとは(digital divide) : 富士通総研 (fujitsu.com))
不公平な貿易体制と市場アクセスの格差
WTOは貿易の普遍的なルール作りを目指していますが、WTO加盟国によるドーハ・ラウンドで交渉が難航している現状もあります。
近年では先進国や新興国を就寝に2カ国間・他国間の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)を締結する国・地域が増えています。
また、開発途上国の中には自国の産業構想力が高くなく、国内産業保護のためにFTAを結ぶことに消極的な国もあるため、先進国は途上国の海外市場へのアクセスを促進するための特別な関税制度を設けたり、開発途上国への投資を進めたりしています。
(参考:IDCJ_SDGs_HANDBOOK_GOAL17.pdf)
認知度の偏り
目標17の達成にはグローバルな協力が必要不可欠です。
しかし、国によってSDGsの認知度にばらつきがあることが明らかになっています。
世界の成人の74%が国連の持続可能な開発目標(SDGs)を認識しているものの、アメリカ・イギリス・日本では約半数の人が「知らない」と回答するなど、国によって認知度や意識に偏りがあることが分かります。
グローバルなパートナーシップを結ぶためにも、今後世界的に認知度を上昇させる必要があると考えられています。
日本の現状
2020年に発表された、日本のSDGsへの取り組みの中で大規模な課題が残る項目として
SDGs 12「つくる責任 つかう責任」
SDGs 13「気候変動に具体的な対策を」 SDGs 14「海の豊かさを守ろう」 SDGs 15「陸の豊かさも守ろう」 SDGs 17「パートナーシップで目標を達成しよう」 |
が挙げられているように、日本でパートナーシップを広めていくのにはまだまだ課題が残されています。
(参考:SDGs(持続可能な開発目標)の日本の目標達成状況と課題 – 一般社団法人 英語4技能・探究学習推進協会 (ESIBLA))
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認知度の上昇
日本でも年々、SDGsに関心を寄せる人は増えています。
2020年時点で「SDGsという言葉を聞いたことがある」と答えた人は、前年よりも5.6ポイントあがった32.9%になりました。
年代別に見ると、43.4%が20代で伸び率が10%と、若い世代を中心に関心が高まっていることが分かります。
これは学校でSDGsについて学ぶ機会が増えたことや、就職活動で知識として求められるようになったことが考えられます。
(参考:SDGs17の目標を1つずつ解説!世界や日本の現状を理解できます (ethicame.com))
取り組み率の低さ
認知度が上昇している一方で、取り組み率には大きな課題があります。
日本の企業の中でSDGsに積極的なのは 24.4%、つまり4社に1社程度しかないというデータがあります。
「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」企業は8.0%しかなく「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」企業は16.4%だと言われています。
積極的な企業がある一方で、半数近くは認知しつつも取り組んでいません。
また関心が高まっているものの、何をすればいいか分からないという人は多く存在します。
企業間、政府企業、研究者、市民などなど分野を超えた連携が必要になるこの目標を達成するには、いかにSDGsの目標に積極的に参加できる仕組みをつくるかが鍵となると予想されます。
(参考:事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2020年) (tdb.co.jp))
世界の取り組み
UNDP(国連開発計画)
UNDP(国連開発計画)は、目標の達成に向けて知識、専門知識、技術、財源を動員し、共有するマルチステークホルダーパートナーシップを通じて、持続可能な開発のためのグローバルパートナーシップを活性化するための呼びかけを行っている団体です。
SDGsを促進するために、民間セクター、財団、その他の非国家主体と国連システムとのパートナーシップ構築のためのゲートウェイとして機能しています。
- グローバルなネットワーク
- 国連機関としての中立性
- 国連システム全体の調整機能
- 多岐に渡る活動と政策提言を合わせた包括的支援体制
- 専門性と長年の実績
を生かし、パートナーと連携して持続可能な人間開発を推進しています。
またUNDPは「アフリカ開発会議(TICAD)」など、日本 政府主導の様々な国際会議も共催しています。また国の機関だけでなく、非営利団体や学生団体、有志団体などと共に、「ソーシャルグッド・サミット」や「SDGs x Youth」など、SDGs 普及のための様々なイベントを開催しています。
例として、国際協力機構(JICA)とは2009年に連携強化のための覚書を締結し、定期協議を開催すると共に、連携して世界各地の開発現場 でプロジェクトを展開して成果をあげています。
(参考:https://www.un.org/partnerships/)
ESG投資を組み込むPRI(責任投資原則)
ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を取ったもので、従来多かった儲かっている企業や伸びそうな企業という観点ではなく、
- 自然環境にとってよい企業か
- 社会にとってよい企業か
- 企業の収益の公正さ
- それらが持続可能かどうか
といった観点から投資先企業を判断するものです。
提唱されてから、現代社会の投資のスタンダードになりうる、とESG投資に取り組む機関投資家も運用資産残高も増えています。
詳しくは A0019の記事で解説しているので興味のある方は併せてご覧ください。
(参考:「SDGs 17.パートナーシップで目標を達成しよう」の取り組み事例5選! | みらいい (miraii.jp))
企業の取り組み カールスバーグ 「カールスバーグ・サーキュラー・コミュニティ」
デンマークの大手ビール醸造会社であるカールスバーグは、パートナー企業とともに、廃棄物ゼロにする「サーキュラー・エコノミー」型の新製品開発やマーケティング活動を行っています。
詳しい取り組みは アクセンチュアへのインタビュー記事 でも紹介しているので、興味のある方は併せてご覧ください。
この取り組みでは、環境配慮型ビンの新モデル「グリーン・ファイバー・ボトル」を発表しました。
グリーン・ファイバー・ボトルとは、木繊維を素材とし投棄されたとしても自然環境下で無害物質への生分解が可能なもので、素材である木材は、植林と収穫の量を同じ割合とし持続可能な方法を営んでいる林業事業者からのみ調達されます。
2017年までにパートナー企業の数を17社にまで増やし、パートナーシップの輪を広げています。
(参考:【デンマーク】カールスバーグ、木繊維を素材とした「グリーンファイバーボトル」の新デザインを発表 | Sustainable Japan)
日本の取り組み
内閣府の取り組み 「Society 5.0」
日本の内閣府の取り組みとして「Society 5.0」の形成が挙げられます。
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を構築することを目的としているのがこの取り組みです。
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において日本が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。
これまでの情報社会(Society 4.0)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分であるという問題がありました。
そこで今までの情報社会で人間が情報を解析することで価値を生んできていたものを、Society 5.0では、膨大なビッグデータを人間の能力を超えたAIが解析することにしました。
その結果をロボットなどを通して人間にフィードバックすることで、これまでには出来なかった新たな価値が産業や社会にもたらされると予想されています。
(参考:Society 5.0 – 科学技術政策 – 内閣府 (cao.go.jp))
企業の取り組み① SoftBank×東京大学「魔法のプロジェクト」
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SoftBankと東京大学先端科学技術研究センターは共に、障がいのある子どものための携帯情報端末の活用事例研究を行っています。
このプロジェクトは、「魔法のプロジェクト」と名付けられ、携帯情報端末を実際に教育現場で活用し、その有効性を検証し、より具体的な活用事例を公開していくことで、学ぶ上での困りを持つ子どもの学習や社会参加の機会を増やすことを目指しています。
タブレットや「Pepper」などを無料で貸し出しする活動も行っており、教育機関などと協力し研究を進めています。
(参考:障がい児の学習・生活支援を行う「魔法のプロジェクト2020 ~魔法のMedicine~」の協力団体を選考~地方自治体を含む69団体に合計192台のタブレットやPepperなどを貸し出し~ | プレスリリース | ニュース | 企業・IR | ソフトバンク (softbank.jp))
(参考:魔法のプロジェクト (maho-prj.org))
企業の取り組み② 博報堂DYグループ×JANIC(特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター) 「ひとこと多い張り紙」
「ひとこと多い張り紙」とは、生活の中でよく見かける張り紙に使われている言葉を用いることで、SDGsの17目標とその課題を身近に感じていただくことを目的に、JANIC(特定非営利活動法人 国際協力NGOセンター)と博報堂が共同開発したSDGs理解促進ツールです。
「注意!」「~お願い~」など、その生活シーンにおいて大切なことが張り紙に書いてあるのはよく見かけますが、「ひとこと多い張り紙」では、普遍的で誰もがすぐに理解できる言葉を使い、SDGsが示すゴールに取り組むことの大切さに気付いていただけるようなひとことを入れていることが特徴です。
(参考・引用:「ひとこと多い張り紙」で、SDGsの普及を目指す。【博報堂DYグループに広がる、ソーシャルアクション!VOL.6】 |博報堂WEBマガジン センタードット (hakuhodo.co.jp))
まとめ
SDGs17「パートナーシップで目標を達成しよう」について学んできました。
SDGs1~16にあるように、世界中には大きな課題が山積みです。
2030年までにこれらの課題を全て解決する、という目標を無謀だと思いますか?
国で、企業で、研究者での取り組みはもちろん大切です。
しかし最終的に個人の意識がなくては根本的な解決には至りません。
私くらいはやらなくても大丈夫だろう・・・別に私には関係ないし・・・
そう思ったことはありませんか?
2030年までにこの課題が解決できるかはあなたに掛かっています。
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