【更新日:2021年5月25日 by 佐野 太一】
提供:アッヴィ
アッヴィは5月11日、「炎症性腸疾患(IBD)の認知度・理解度および患者の生活意識に関する調査」の結果を発表した。
IBDは、大腸や小腸など消化管に炎症が起こり、腫瘍を合併することもある国指定の難病。厚生労働省衛生行政報告例によると、最も推計患者数の多い指定難病だ。原因は不明で、根治させる方法は見つかっていない。主な症状が”下痢”や“腹痛”という身近な症状から、周りに疾患であると気づかれにくいことも特徴の一つ。
この調査はIBD患者と一般人の合計791人を対象とし、2020年3月に実施された。
【図①】Q:あなたは炎症性腸疾患(IBD)-潰瘍性大腸炎/クローン病を知っていますか。
「あなたは炎症性腸疾患(IBD)-潰瘍性大腸炎/クローン病を知っていますか」という質問に対して、一般人の56.0%が「全く知らない」、34.8%が「聞いたことはあるが、どんな病気かは全く知らない」と回答。合わせて9割以上(90.8%)がIBDという疾患の詳細を知らず、IBDの疾患認知は1割以下(9.3%)にとどまる結果だった。
【図②】Q:IBDについてあなたがご存知のことをすべてお選びください。
IBDについて「どんな病気かよく知っている」、「どんな病気かある程度知っている」、「聞いたことがあるがどんな病気かは全く知らない」と回答した人を対象に、知っているIBDの症状や病態を12項目の選択肢と共に質問したところ、最も多かった回答は「この中に知っていることは一つもない」(36.4%)だった。IBDに対する認知度・理解度双方の低さが明らかになった。
【図③】患者Q:IBDによる症状の影響で普段の生活の中でどのような困ったことがありますか。一般人Q:もしあなたがIBDの症状になったとしたら、どれが生活に与える支障が大きいですか。
IBD患者を対象に、日常生活で困っていることを尋ねたところ、「薬を飲んだり通院をし続けなければいけないこと」(50.8%)が最も多い結果となりました。一方、一般人にIBDの症状を説明し、自分がIBDになったら困ると思う症状を尋ねたところ、1位が「痛みがつらいこと」(61.4%)となり、実際の患者との認識に差異が見られた。
【図④】Q:総合的にみて、現在のあなたの生活の満足度は次のどれにあてはまると思いますか。
現在の生活満足度について尋ねたところ、「非常に良い」、「やや良い」と回答した人の割合は、症状が落ち着いている「寛解期」のIBD患者では49.5%、一般の方は46.6%、症状が悪化した「活動期」のIBD患者では36.6%となった。
生活満足度を世代別にみると、10代から30代の一般人で「非常に良い」と回答した割合は8.0%だったのに対し、 同じ世代の「寛解期」のIBD患者では16.3%と、2倍の開きがあった。
【図⑤】Q: あなたの現在の生活における満足度に関する各項目を評価するとしたら、以下のそれぞれは10点満点中何点になりますか。それぞれ1点を最低点、10点を最高点としてあてはまるものを1つお選びください。
現在の生活の満足度をより詳細に、健康、社会生活(仕事、学校、勉強など)、睡眠、収入、人間関係などの10項目ごとに計り「ウェルビーイングスコア」として、一般人とIBD患者を比較。その結果、睡眠、社会生活、意欲、収入、恋愛の5項目で、症状が落ち着いている「寛解期」のIBD患者のスコアが高い結果を示した。
適切な治療方法によって症状をコントロールすることが、生活満足度及びウェルビーイングスコアの向上につながると考えられる。
なお、「世界IBDデー」の5月19日に行われた「炎症性腸疾患(IBD)メディアセミナー」でIBD患者の山田貴代加さんは、「多くの患者さんは、特別扱いされるのではなく、一般の方と同じように接してもらいたいと思っているのではないかと思います。ただ、やはり生活をする中で制限されることもあるので、体調や状況を根気強く聞いてもらえると非常に嬉しいです」とコメントしている。
SDGsゴール8「働きがいも経済成長も」では、持続可能な経済成⻑とすべての人々の生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進することが掲げられている。すべての人が難病をはじめとした疾患に対する理解を少しずつ深め、患者が快適に働ける環境を整備していく必要がある。
SDGs CONNECT ニュース/イベントライター。立教大学でジャーナリズム論を主に研究。記事執筆の傍ら、陶芸制作にも取り組んでいる。好きな食べ物はメロン。