【更新日:2021年9月15日 by 三浦莉奈】
日本通運株式会社(以下、日本通運)は、日本最大の総合物流企業です。
みなさんの中にも、街の中で代表的な赤いマークを目にしたことがある、または、引っ越しや配達で利用したことがある方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな日本通運ですが、物流に関する事業を幅広く展開しており、SDGsに関連した取り組みも数多く行っています。日本の物流業を先導する、日本通運のSDGs戦略とはどのようなものでしょうか。
このページでは、日本通運の事業内容をはじめ、SDGs戦略や企業活動まで、幅広く紹介していきます。
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日本通運 / 事業
日本通運の概要
日本通運は、1937年に半官半民の「国策会社」として発足しました。その後は、主要都市の運送会社の合併(1942年)を通して、戦後の1950年に純粋な民間会社として再出発し、日本の物流業を支えています。
設立 | 1937年(昭和12年)10月1日 |
資本金 | 701億75百万円 |
従業員数 | 34,449人 |
事業 | ①国内輸送 ②国際輸送 ③専門輸送 ④倉庫保管 ⑤ロジスティクス・ソリューション |
*2020年3月31日現在
【引用】会社概要 | 会社情報
日本通運の事業内容
日本通運は大きく5つの事業を展開しています。簡単ではありますが、ご紹介していきます。
国内輸送
トラック、鉄道、航空、海上輸送を自由に組み合わせ、個人や企業のお客様の幅広いニーズに応えています。
国際輸送
グローバルネットワークを駆使した、日本と世界を繋ぐ輸送を提供しています。
専門輸送
オフィスの移転、国宝級の美術品輸送、重量品の輸送、現金輸送などの輸送が困難なモノも運んでいます。
倉庫保管
国内No.1の倉庫面積とネットワークで、企業の在庫・供給拠点としての利用や、国際輸送のサポートなどあらゆるニーズに対応しています。
ロジスティクス・ソリューション
世界を網羅するネットワークや蓄積された高度なロジスティクスのノウハウで、お客様のあらゆる物流課題に応えています。
日本通運の企業理念
日本通運には、1958年に社員の心構えとして制定した「われらのことば」があります。
われらのことば 運輸の使命に徹して 社会の信頼にこたえる 業務の改善を図って 社運の発展につとめる 心身を健全に保って 明朗な生活をいとなむ |
この精神を引き継ぎ、今後どんな方向を目指し、どんなことを大切にし、社会に貢献していくのかという企業の存在意義を明文化したものが、企業理念です。
日本通運のSDGs戦略
日本通運は、環境・社会・ガバナンスの3つの分野において主なESG課題を定め、課題を克服するためのアプローチを行い、持続可能な社会への貢献に向けてさまざまな取り組みを行っています。
環境
主なESG課題 | ・気候変動への取り組み ・資源循環の推進 ・大気・土壌等の汚染防止 ・適正な水利用 ・生態系の保全 |
アプローチ | ・LED化の推進やエコドライブの推進などによる、温室効果ガスの排出量削減 ・3Rの推進、環境配慮型商品・サービスの拡充による省資源化の取り組み推進 ・法令・条約に基づいた外来種の越境移動の防止の徹底 |
社会
主なESG課題 | ・持続可能でレジリエントな物流インフラの構築 ・サプライチェーンにおける人権の尊重 ・雇用の創出 ・従業員エンゲージメントの向上 ・事業のデジタル化とDXの推進 |
アプローチ | ・日通安全衛生マネジメントシステム(NSM)を通じた従業員への安全衛生の周知・徹底 ・衛生に関する指導・教育の推進 ・人権に配慮した調達の推進 ・従業員の活躍と成長が実現される人財マネジメントの推進 ・イノベーションを通じたお客様や社会への価値創造と社会課題の解決の推進 ・地域に密着した課題の解決と社会づくりへの貢献 |
ガバナンス
主なESG課題 | ・ガバナンスの強化 ・リスクマネジメントの強化 ・品質の向上と新価値の創造 |
アプローチ | ・取締役会、監査役会およびコンプライアンス委員会による監督機能の強化と実効性ある運営の実現 ・反競争的行為、贈収賄等の防止に向けたコンプライアンス教育の継続実施 ・内部通報制度「ニッツウ・スピークアップ」の従業員への浸透・活用促進 ・日通安全衛生マネジメントシステム(NSM)を通じた従業員への安全衛生の周知・徹底 ・関係会社・協力会社への安全に関する指導・教育の推進 |
日本通運のSDGsの取り組み
ここでは具体的に、日本通運が実際にどのような取り組みを行なっているのか、一部ではありますがご紹介します。
「ECO-TOWMAS」
日本通運では、排出される産業廃棄物を適正にするための独自のマニフェスト管理システム「ECO-TOWMAS」を導入しています。
事業者が排出する産業廃棄物は、事業者自ら処理をすることが法律で定められていますが、これが困難な場合は、廃棄物処理業者にその処理を委託しなければなりません。委託する際は契約を締結し、排出事業者はマニフェストと呼ばれる、産業廃棄物の終了を確認する仕組みを廃棄物処理業者に交付し、処理終了後に、回収・管理することが法律で定められています。
「ECO-TOWMAS」の前身となるマニフェスト管理システムでは、手書きのマニフェストの内容をデータで管理し、適正であるかを1件ごと確認していました。しかし、マニフェスト管理センターで確認をするのは交付後であったため、不適切なマニフェストを発見できたとしても既に収集運搬業者や処理業者に渡ってしまった後、ということもありえました。こうした人為的なミスを防ぎ、法令に基づいた適正なマニフェストを確実に発行するために「ECO-TOWMAS」が開発されました。
「ECO-TOWMAS」には、新たにコンプライアンスチェック機能、マニフェスト自動発行機能が加わり、人の目ではなくシステムが自動的にチェックするようになりました。
このシステムによって、グループ全体の廃棄物のデータが可視化され、コンプライアンスリスクの低減ができており、日本通運が推進している廃棄物の削減や3Rの推進に大きく貢献しています。
モーダルシフト
日本通運グループでは、、トラック中心の輸送形態から、鉄道・船舶を利用した輸送形態へ切り替える「モーダルシフト」に数多く取り組んでいます。鉄道輸送は、トラック輸送に比べて、長距離・大量になるほど効率的で安定的な輸送手段であり、CO2排出量の削減にも効果的です。海上輸送は、低コストで大量の貨物を長距離輸送できる環境負荷の低い輸送方法です。また、港から陸への輸送については鉄道輸送との連携により、燃料消費に伴うCO2排出量の削減に取り組んでいます。
まとめ
土台となるシステムを開発して状況を可視化することで、持続可能な未来へ繋ぐ。こうしたサイクルをつくることが、同時に持続可能な企業になるためのひとつの鍵なのかもしれないと日本通運の取り組みを通して感じました。
運送業界では深刻な人手不足も問題になっていますが、鉄道・海上・トラック輸送それぞれの特性を活かしたモーダルシフトは、こうした面でも効率的な方法だと思います。
持続可能な未来を多様なアプローチで目指す、日本通運の取り組みに目が離せません!